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レイブンとクロウ

「ねえ、レイブンとクロウの違いって知ってる?」ニコニコしながらキミはいった。

「どっちも同じカラスでしょ?」と私が答えるとキミは待ってましたとばかりに続けた。

「ううん、同じカラスはカラスなんだけどね。確かによく似てるけど実は違いがあるんだよ。例えばー」

キミは名も知らぬ木に何羽か止まっているカラスの群れを指差した。

「あそこに止まってるのはレイブン、こっちにいるのはクロウ。そしてあれもクロウだね。今日はレイブンはあまりいないみたい。」

私はキミが指差す方によく目を凝らしてレイブンとクロウとクロウを見つけようとしたがやっぱりカラスしかいなかった。

「難しいね。さっぱり分からない。」

キミはそうでしょーと言いながら楽しそうにあれはレイブン、あれはクロウと指差しながら続けた。

「じゃああれはレイブン?」と私が指を差す。

「ううん、それはクロウだよ。惜しいね。」

「じゃあこれがクロウ?」

「そうだよ、すごいね。さすが。」

「じゃああれは...レイブン!」

「ぶぶー、クロウでしたー残念」

私はこういう感じで木々に止まるカラスというカラス見つけてはあれはレイブンとあれはクロウと指差してはキミはすぐに答え合わせしてくれた。どんな違いがあるんだろう不思議だなと思いながらそのやりとりをただ夢中になって続けた。カラスもカラスで不思議そうな面持ちで私を見つめている気もしてきた。何十羽見ても違いが分からずカラスにしか見えず当てずっぽうだったので、正解率はちょうど5割くらいだった。

数十分ほどしてとうとう私は諦めた。「もう疲れちゃった。さっぱり違いが分からない。大体カラスで間に合ってるのにレイブンとクロウを見分ける意味も分からない。ねえどんな違いがあるの?教えてよ。」と苛立ちながらぼそりと呟いた。反応はない。

木々に佇むカラスの群れからふとキミに目をやるも、もういなくなってた。

別にレイブンであろうがクロウであろうが、どちらでもいいかなと思って私もその場を立ち去った。

ーーー

あれはクロウ、あれはレイブン、あれは多分クロウ....

通学途中ゴミを漁るカラスの群れを見つけては少し歩を止め目を凝らしぼそぼそつぶやく。あれからずーっと考えてるんだけどやっぱりちっとも違いも分からないし、合ってるかどうかも誰も答え合わせもしてくれないんだけど。ただ、いつか、ふっと「ブブーそれはクロウだよー」なんて言いながらキミが現れる気がして。

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