やべえやつの頭ん中

「大体小説や漫画の主人公ってクセがあるんだよ。子供の頃から変わってましたとか、なんか可哀想な体験してますとか、んで、普通の奴は主人公じゃないんだよ」
そう小林が力説するのを政治家の演説並にうるさいなと思いながら聞き流しながらビールを飲みながら、ながらながらながら。ながら見はいけないとそういや子供の頃言わ「おい聞いてんのかよ」「聞いてるよ。お前ウザい」「なにがウザいだよ。大切な事だぞ、俺らみたいな奴は小説や漫画の主人公にすらなれないって話だぞ。自分自身の話ですらな」そこまで話が進んでるのかと驚きつつ店員の女の子が可愛かったので名札を見て(伊藤ちゃんか)と、またいらない事を覚えちゃったなと思いながら小林の顔を見たら不機嫌そうな顔していた。またやっちゃったと思った矢先「もういい、帰るわ」と小林に言われ「そっか。なんかごめんな」としか返せなくて、また一人友達減っちゃったな的な事をぼんやりと思いながら小林が店から出ていくのを席から見送った。

とまあ、こんな感じで僕は集中力が無い。病院とか行ったらちゃんとADSLだとかHDMIです、とかみたい診断名つくのあっ伊藤ちゃんだ。「すみません。伊藤ちゃんビール下さい」「えっあっはい。ありがとうございます」伊藤ちゃんの名札には(いつも笑顔でがんばります)と書いてあったけど笑顔じゃなかったな。嘘は書いちゃ駄目だよな。あっそういえば会計どうなってるんだろ。怒ってたから払ってないだろうな。まあ仕方ないか。でもウザい思いしてお金払うってなんかおかしくね。小林の演説料たっか。二度と聞きたくないわと思ったけど二度と誘われないのは僕の方だったわ。

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