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「全ての人が健康に」は本当にビジネスになるのか?〜 ヘルスケアビジネスの真実〜

全ての人にとって重要なテーマとも言える「ヘルスケア」は、ビジネスの視点から見れば、大きな収益を生み出す潜在力があると言えます。近年、まちづくりやスーパーシティ構想、健康経営、予防医療、アンチエイジング、フレイル・認知症予防等といった、様々なビジョン(アプローチ)に基づいた新たな事業モデルが続々と展開されています。

しかし、それら全てがビジネスとして成立し、持続的な収益を生むとは限りません。なぜなら、持続的な収益を生むには、その事業の根幹を成す収益モデルの確立が前提となるからです。現状で見ると、国の保険制度が適用される医療・介護といった領域においては、その保険範囲外のニーズに対応する形で、比較的安定したビジネスモデルが存在しているように見受けられます。

一方で、例えば、「住民が自然と健康になれるまち」という美しいビジョンを掲げ、それをビジネスとして具現化しようとすると、そこには確固とした収益源を見つけ出すことが求められます。その運用コストを賄うビジネスモデルがなければ、長期的な事業運営は難しいと言えます。

更に、「健康」を「資産」と位置づけ、「健康づくり」を資産への投資とすると、前述の「住民が自然と健康になれるまち」のビジョンは、「住民が自然と資産家になれるまち」と同義になります。これは、ビジネスモデルとしての根本的な問題を示しています。なお、あくまでビジネスとしての観点から見た場合であり、国や自治体が社会の一部として取り組むべき重要なテーマであることは間違いありません。私もそうした取り組みに携わっています。

これを、修正すると以下のようになります。健康は資産であり、健康投資は重要な資産形成の一つである。その資産を維持し、増やすには、さまざまなサービスやノウハウ、コンサルティング等が必要。当然ながら、そうしたサービスの利用には対価(費用)が伴う。というロジックになり、健康づくりを資産形成・投資と考える人や企業からその収益を得る、というのが自然の流れになります。一度、この考え方で市場アプローチを再考することもお勧めします。ヘルスケア分野に対し金融ビジネス的なアプローチでコンセプト再構築を試みても面白いのではないでしょうか。

ヘルスケアという広範な分野に対して一括りにビジネスアプローチを行うのはリスクが高いと言えます。ヘルスケア市場を細分化し、それぞれの具体的なニーズや課題に対応する事業モデルを構築することが重要となります。

同時に、ベンチャーキャピタルにとっても、投資対象となるスタートアップを評価する際には、その特定の領域や問題解決の手法について深く理解し、その潜在能力を正しく評価することが求められます。

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