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看護師主導の地域ヘルスケア事業「まちの保健室」の自立と成功への道筋を考える

看護師等が中心となって自主的に運営する地域の保健サービスや予防医療サービス『まちの保健室』事業が自立しづらい理由はいくつかあります。収益モデルが困難である点、市場の形成が難しい点、適切な人材の不足などが挙げられます。以下、これらの視点から考えてみます。

1 収益モデルの問題

『まちの保健室』事業は、一般的には自治体等、行政からの補助金や助成金に依存する部分が多いです。しかし、公的資金は予算が限られており、特に地方自治体などでは厳しい経済状況の中で配分を余儀なくされています。そのため、自立した事業として成り立つためには、他の収益源を開拓する必要があります。

2 市場形成の難しさ

予防医療サービスなどはその効果が長期的に見られるもので、短期的な利益を求める市場の要求とは一致しづらいです。また、利用者が予防医療の必要性を十分に理解していない場合、需要の創出が難しい場合もあります。(理解していても、お金までは払おうとしないケースも多いです。)

3 人材の不足

看護師は医療の専門家ですが、経営についての知識やスキルが不足している場合が多いです。経営に関するスキルや知識は、事業を自立させ、適切に運営するために必要な要素です。

これらの問題を解決するためには、次のようなアプローチが有効であると考えられます。

(1)収益源の多角化
公的資金に依存するだけでなく、自費サービスの開発や企業とのパートナーシップなどを通じて、収益源を多角化することが重要です。

(2)教育・啓発活動の強化
予防医療や介護予防の重要性を理解してもらい、その価値を評価してもらうためには、地域住民や患者に対する教育・啓発活動が必要です。

(3)他業種との協業
例えば、フィットネスクラブやスーパーマーケットなどと提携し、その場所での健康チェックや健康相談を提供することも一つの方法です。これにより、新たな顧客層にアクセスするとともに、収益の一部を得ることも可能です。

(4)テクノロジーの活用
テレヘルスやデジタルヘルスのような新たなテクノロジーを活用することで、より多くの人々にサービスを提供することが可能になります。また、データ分析を活用して効率的なサービス提供や効果測定を行うことも重要です。

(5)地域社会との連携
地域の行政、教育機関、NPOなどと連携し、地域全体での健康増進を目指すことが重要です。それにより、予防医療の重要性が広く認識され、地域社会全体の支持を得ることができます。

(6)経営人材の確保と育成
看護師だけでなく、経営についての知識と経験を持った人材を積極的に採用することも重要です。また、既存のスタッフに対しても経営やマネジメントに関する研修を提供し、能力を向上させるべきです。

以上のような取り組みにより、看護師が自主的に運営する地域の保健サービスや予防医療サービス、介護予防サービスの事業『まちの保健室』は、自立して成長し、地域社会に貢献することが可能になると考えられます。

また、さらに、在宅療養・介護分野におけるリビングラボ機能をミックスする戦略をとることも有望と考えています。(リビングラボは実際の生活環境を研究開発の場とし、ユーザーの直接的な参加やフィードバックを通じて新たなサービスや製品を生み出す概念です。)

具体的なアプローチ

★以下にその具体的なアプローチを挙げてみます。
①ユーザー中心のサービス開発
リビングラボの最大の特徴は、ユーザー(この場合、在宅療養者や介護を必要とする人々、そしてその家族)がサービス開発の中心にいることです。新たな予防医療サービスや介護予防サービスを開発する際には、実際のユーザーのニーズやフィードバックを直接取り入れることが重要です。

②現地での実証実験
リビングラボでは、新たなサービスや製品が実際の生活環境でどのように機能するのかを試すことができます。これにより、実際の効果を確認し、改善点を見つけることができます。

③マルチステークホルダーの連携
地域の行政、医療機関、企業、NPOなど、さまざまなステークホルダーを巻き込んで協働することにより、より幅広い視点からサービスを改善し、事業の持続性を確保することができます。

④データの活用
リビングラボの活動を通じて収集されるデータを活用することで、より効果的なサービスを開発することができます。また、データを共有し、オープンなイノベーションを促進することも可能です。

以上のアプローチにより、在宅療養や介護分野におけるサービスは、ユーザーの真のニーズに基づいて改善され、より広範で効果的な予防医療・介護予防サービスの開発・提供が可能になると考えられ、これらの分野に参入している、あるいは新規参入する企業にとって欲しい機能であり、この機能を提供するサービスを『まちの保健室』が持つことも収益向上の一翼を担えると思っています。


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