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山鹿小旅行 ~八千代座編~

山鹿燈籠民芸館前の豊前街道を3分ほど進むと、右手に見えてくるのが八千代座だ。

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建築は明治43年。
現在は国の重要文化財に指定されているが、一時期は廃墟同然となり、取り壊しが検討されたこともあったという。
しかし、地元市民による地道な保全活動が続けられた為、形を再現しただけでなく、ほとんどの部分で建設当時の木材などがそのまま使われている。

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↑100年以上前から、幾多の名役者たちが実際に踏みしめてきた花道だ。

天井や壁面を飾る広告は作り直されたものだが、原画が保存されていたため、かなり忠実に復元されているという。

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↑正面左端の酒蔵を含め、現存するお店もいくつかあるそうだ。

天井に目を移すと、中央に大きなシャンデリアが見える。
現在はさすがにLEDになっているが、元はガス灯のシャンデリアだ。
金属部分は大正時代に撮られた写真を元に復元されている。

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↑ご注目頂きたいのが8つのグラスシェードだ。
やや楕円形の4つは、建設当時のものがそのまま使われている。
これがなんと、ロストテクノロジーの産物である。

現物を見せていくつものガラス工房に再現を依頼したらしいのだが、どこの工房でも工法が分からなかったというのだ。
しかも、現代の技術をもってしても、同じ模様・同じ薄さに仕上げることはできず、どうしても重くなってしまうのだとか。

現代のガラス職人の尽力により、言われなければわからない程度に外観が似たものに仕上がってはいる。
ただ、技術というものはきちんと継承しなければ失われてしまうということを、改めて考えさせられる。

花道を通って舞台に上がり、さらに楽屋や舞台下の「奈落」も見学できる。

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↑舞台中央の廻り舞台の下部。
回転は人力で、約3トン+舞台装置を4人で回す。

廻り舞台のレールと車輪はドイツの老舗クルップ社の製品。
100年以上前のものがそのまま使われている。

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こちらは廻り舞台に設置された「迫(せり)」。
こちらも人力で、役者を乗せて4人がかりで担ぎ上げる。

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廻り舞台の下を抜けると、花道の下部通路に繋がっている。

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↑こちらは花道に設置された迫(せり)で、「すっぽん」という。
歌舞伎では人外キャラ専用の登場口だそうだ。

やはり人力で、約200kg+役者を4人で担ぎ上げる。
通常は花道の床の一部なわけだが、どうやって固定しているかというと、なんと木片を噛ましているだけだ。
「すっぽん」の上を通るときはあまりドタドタしないほうがいいのかも?

花道の下部通路を通り抜け、急な階段を上がると、花道の登場口に出る。

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↑今回はちょっと写真を撮り損ねたのだが、ここを隠すカーテンのレールとリングは敢えて静音にせず、金属製で太めに作られている。
勢い良くカーテンを開けると、小気味良い音を立てる。

八千代座は今も現役の劇場として公演が行われているほか、「るろうに剣心」や「裸の大将」など、映画のロケ地としても使われている。

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↑隣接する資料館の一室には、八千代座の舞台を踏んだ演者たちの直筆サインがずらりと並んでいる。


いただいたサポートは旅費と撮影機材にあてたいと思います。もし余剰があれば福岡・熊本・鹿児島いずれかの自然または文化財の保全のために寄付いたします。