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人工知能(AI)による画像生成等における著作権について

まず私は、法律の専門家ではないので、基本的なこの考察が正しいのか間違っているのか判断することは難しいという事実を元に以下の文書を読んでいただければ有り難い。

まず、立場的な説明をしておきたいが、私の場合は、写真をはじめ、画像、映像、音楽、ウェブサイトなどマルチメディア・クリエイターとして働いており、音楽大学や各種ICT関連の専門学校で教鞭をとっている。このため、生成AIに対して教えることもあり、その中で理解した内容を書きたい。


1.著作権の定義と大雑把な結論

「著作権」とは、「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利です。他人がその著作物を利用したいといってきたときは、権利が制限されているいくつかの場合を除き、条件をつけて利用を許可したり、利用を拒否したりできます。

https://www.cric.or.jp/qa/hajime/#:~:text=%E3%80%8C%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81,%E6%8B%92%E5%90%A6%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

ここまではわかります。そこでAIによって作られたものが著作物になるのか考えてみましょう。基本的な著作物の定義は下記です。

著作物とは、日本の著作権法の定義によれば、「思想又は感情創作的に表現したものであって、文芸学術美術又は音楽の範囲に属するもの

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E7%89%A9

となります。

コンピューター上のシステムが生成したものに思想や感情は含まれていませんね・・・となるとそれ自体に著作権は認められないという結果になります。しかし、生成された成果物自体には著作権がないが、悪意を持ってそれを利用すれば利用者の著作権侵害は成り立つことになるでしょう。方や、悪意がなく利用した場合でも可能性としては著作者からの訴えは発生し、その際に新たに検討することになります。

つまりとても曖昧。

2.日本政府の見解

もう少し詳しく理解する為にAIによって調べてみます。

2024年4月時点における日本政府の見解は以下の通りです。

著作権法上の保護可能性

  • AI生成物自体が著作物として保護されるかどうかは、個々の具体的な状況によって判断される。

  • 著作物性の判断基準は、従来の著作物と同様に、独創性、思想・感情の表現、創作性などを考慮する。

  • 現時点では、多くのAI生成物は著作物性がないと考えられているが、技術の発展に伴い、将来的には著作物と認められるものも出てくる可能性がある。

著作権侵害のリスク

  • AI生成物が、既存の著作物に類似し、かつ依拠している場合は、著作権侵害となる可能性がある。

  • 学習データに著作物が含まれている場合にも、著作権侵害となる可能性がある。

利用に関する制限

  • 著作権法上の権利制限規定に基づき、著作権者の許諾なしでAI生成物を利用できる場合がある。

  • ただし、必要と認められる限度を超える利用や、著作権者の利益を不当に害する利用は認められない。

今後の課題

  • AI技術の発展に伴い、著作権法の改正が必要となる可能性がある。

  • AI生成物の利用に関するガイドラインの策定など、適切な利用環境の整備が必要である。

参考資料

3.AI生成物に著作権がないと判断される根拠

もう少し深堀りしてみましょう。
AI生成物に著作権がないと判断される根拠は、主に以下の2点です。

1. 思想・感情の表現がない

著作権法は、思想又は感情を表現した創作物を保護するものです。AI生成物は、人間が創作した作品とは異なり、人間の思想や感情に基づいて創作されたものではないと考えられています。

そのため、多くの場合、AI生成物は著作権法上の著作物認められない とされています。

2. 創作性が低い

著作物であるためには、一定程度の創作性が必要とされています。創作性とは、独創性オリジナリティを兼ね備えたものであると解釈されています。

AI生成物は、学習データに基づいて生成されるため、人間が創作した作品ほど独創性やオリジナリティが高いとは言い難い です。

そのため、多くの場合、AI生成物は著作権法上の創作性低い と判断されています。

筆者注:この「創造性が低い」というのはもう言えないと思います。すでに多くのAIによる画像などの作品が生み出されていて、人間の視点では作れないものや、新たな世界観の作品が増えています。

例外

上記のように、AI生成物には著作権がないと判断されることが多いですが、以下の場合は著作物と認められる可能性があります。

  • 人間が介入して創作性を付加 している場合

  • AIが独自に新しい表現 を生み出している場合

これらの場合は、人間の思想・感情創作性 が認められる可能性があるため、著作物として保護される可能性があります。

今後の課題

AI技術の発展に伴い、AI生成物の著作権に関する問題はますます複雑化していくことが予想されます。

今後、AI生成物が著作物として保護されるべきかどうか、また、どのような要件を満たせば保護されるべきなのかについて、議論が活発化していくことが考えられます。

4.画像などにおける著作権侵害を懸念する人に

人工知能(AI)が生成する画像をめぐる著作権問題について、多くの人が誤解していると思われる点があります。それは、AIが学習に使用した画像を単にコラージュして生成しているという考え方です。

Midjourneyのような最新のAIでは、学習された画像そのものデータではなく、画像における関係性が蓄積されています。つまり、Midjourneyは世界を関数で理解し、その関数によって指定された文章から完成形の画像を推測し全く新しい画像を生成しているのです。

それによって作られた画像が著作権侵害を起こす危険性はもちろんあると言えます。しかしながら生成された画像自体は著作物ではないというのが日本政府の見解ですので、その画像を利用者がどう使うかという部分が重要となるでしょう。

PS.aeyaeshさまのご指摘もあり、学習時におきる過学習から、元画像とほぼ同じ生成物が生成される危険もあるとのことです。

5.著作権譲渡における問題

1. 著作権の帰属

  • AI生成物の著作権: AIが生成物を作成した場合、その著作権が誰に帰属するかが最初の問題です。現行の著作権法では、AIそのものが著作権者とは認められません。

  • 人間の関与: AIの利用者や開発者が生成物の著作権を持つかどうかは、その生成物の制作に対してどの程度創造的な関与があったかによります。著作権が帰属するのは、通常、人間の創造的な貢献が認められる場合です。

2. 契約の重要性

  • 契約による明示: クライアントに生成物を譲渡する際に、著作権も譲渡するかどうかを明確にするため、契約書にその旨を明記することが重要です。譲渡する権利、範囲、条件などを詳細に記載します。

  • ライセンスの確認: 生成AIツールの利用規約やライセンス契約に、生成物の著作権に関する条項が含まれていることが多いです。ツール提供者が生成物の著作権に対する権利を主張している場合、それに従う必要があります。

3. 利用規約と制約

  • 生成AIの利用規約: AIツールやプラットフォームの利用規約には、生成物の著作権に関する条項が含まれていることがあり、これが著作権譲渡に影響を与える場合があります。利用規約を確認し、クライアントへの譲渡が許可されているかどうかを確認します。

  • 制約の理解: 利用規約に基づいて、生成物の使用や再配布に関する制約がある場合、その内容をクライアントに説明し、同意を得る必要があります。

4. 実務上の注意点

  • 譲渡証明書: 著作権の譲渡を正式に行うために、譲渡証明書を作成し、譲渡者とクライアントの双方が署名することが推奨されます。これにより、後日の紛争を防ぐことができます。

  • 著作者人格権: 日本など一部の国では、著作者人格権(同一性保持権など)が認められており、これらの権利は譲渡できない場合があります。この点も契約に明記しておくことが重要です。

つまり、生成AIで作られたものをそのまま納品すると著作権譲渡ができないという結果になり、それら契約に問題が生じます。このため制作者は意匠を施す必要があるでよう。

6.世界的企業のAIの開発拠点が日本に

著作権における解釈も影響してか現在、各企業の開発拠点が日本に設立されていいます。NVIDIA、マイクロソフト、IBM、さらに今年は、テスラ、フェイスブック等が予定されていて、その点を見るだけでは、日本は今後AI大国になる可能性を持っています。

7.今後の画像生成について

例えば、これまで絵を描くという行為は、技術の学習と習得に時間が必要であり、その習得レベルも人それぞれでした。しかし、この学習プロセスをAIに委ね、人間はコンセプト作成に集中するという新たな方法論が生まれています。これは、今後の作画手法の一つとして定着するでしょう。

音楽制作がコンピュータによる制作(DTM)に移行し、一般化したのと同じ現象です。現在、音楽界でもAIの浸透が進んでおり、楽器の演奏経験がない人や音楽作成経験がない人でも作曲が可能になっています。

音楽においては、生演奏であるかコンピュータであるか、その生成方法による価値の違いはほとんどありません。コンピュータの使用は非常に一般的で、それが当然となっています。この「当たり前」の世界が、今、画像や動画の領域にも広がってきています。

これは人類全体にとっては恩恵である一方で、対応できない人々にとっては敵対的な手法となり得ます。しかし、歴史を見れば、敵対するのではなく、並立する形が取られることが明らかです。

並立し、混ざり合いながら、我々は新たな文化の地平へと進んでいくでしょう。

AIによる浮世敵表現




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