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Cut Upってなに?!

カット・アップはアートの世界で発明され発展してきた。詳しくはWikiで検索。それは20年代のダダイスム集会で生まれた。そこでトリスタン・ツァラは、新聞記事から切り出した言葉を袋の中に入れ、ランダムに取り出した言葉を使って詩を作ることを実践した。それは、それまでの文学の直線的な語り口を解体する試みだった。1950年代には画家・著作家のブライオン・ガイシンが偶然の発見から完全なカット・アップ技法まで発展させた。ブライオン・ガイシンはそのカット・アップを作家のウィリアム・S・バロウズに紹介した。二人は後にカット・アップ技法を印刷されたメディアやオーディオ・レコーディング、映画に応用していった。

「諸君が現在をカットした時、未来(の秘密)が漏れてくる」


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この手法を音楽の世界へ応用したものがこのエントリーでいうところのカット・アップだ(後付けではあるが)。それは、1940年代後半に、フランスでピエール・シェフェールが作ったミュージック・コンクレート(具体音楽)といった現代音楽のジャンルで使われた。また、1970年代にはDJのフランシス・グラッソが楽曲を繋いでいくDJミックスを発明。その延長であるメドレーメガミックスマスターミックスで使われた。また、DJというフォーマットの中で様々な手法が発明されカット・アップへ応用されいく。

そのカット・アップに応用されたDJの手法は以下のとおり。代表的なアーティストと手法を紹介する。

フランシス・グラッソらが実践したターンテーブルによるDJミックス

グランドマスター・フラッシュらが実践したターンテーブルによるスクラッチ

ダニー・クリヴィッツらが実践したテープ・エディットによるエクステンデッド・ミックス=リ・エディット。

ラテン・ラスカルズらが実践したテープ・エディットによるサウンド・エフェクト。

マーリー・マールらが実践したサンプラーによるサンプリング。

DJ的手法ではないが重要な要素なので追記します。⑥ブキャナン&グッドマンらが実践したテープ・エディットによるジョーク。

これらの手法を総称しカット・アップと呼ぶ。その手法を使用した代表的な作品がダブル・ディー&スタインスキーの「Lesson 1,2&3」。これを聴けばカット・アップというものわかっていただけると思う。

この映像でもわかるとおり、レコード・レーベルに記されたダブル・ディー&スタインスキーのチーム・ロゴを見てほしい。

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ひとつして同じフォントがなく大きさもデザインもバラバラだ。これを見て思い出すのは、ジェイミー・リードがデザインしたセックス・ピストルズのヴィジュアル群だ。これは前述したブラオン・ガイシンとウィリアムSバロウズがやっていたカット・アップ手法を応用したものだ。そのデザインとダブル・ディー&スタインスキーのチーム・ロゴが酷似しているということは、つまり彼らの根っこはパンクだというメッセージと解釈できる。これはあくまで個人的解釈なのでダブル・ディーさんに聞いてみたいと思う。

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パンクとはなにか?Wikiをみると、

「初期のパンクは様々な影響から生まれたもので、ジョン・サヴェージ はこのサブカルチャーを、西洋で第二次世界大戦以後に存在したあらゆる若者文化を「安全ピンでまとめてとめた」ような「ブリコラージュ」だと称した」。

このブリコラージュとは?Wikiをみると

「フランスの文化人類学者・クロード・レヴィ=ストロースは、著書 『野生の思考』(62年)などで、世界各地に見られる、端切れや余り物を使って、その本来の用途とは関係なく、当面の必要性に役立つ道具を作ることを紹介し、「ブリコラージュ」と呼んだ」。

これは端切れや余り物で本来の用途とは違う新しいものを作るとも解釈できる。それは、これまで説明してきたカット・アップと全く同じ意味だ。つまり、カット・アップとはパンクであるという説明ができる。ざっと歴史を追ってきたが、これはあくまで個人的な見解なのでいづれ識者に詳しく解説していただきたい。


余談だが、そのカット・アップをするためにまず一番最初にしなければいけないこと、それはエディットだ。素材を切り取り断片を作り出すこと。その断片がなければはじまらない。その(サウンド・エフェクトとしての)エディットについて、09年に当時の仲間と共に本〈The Edit〉を〈P-Vine Books〉から出版した。それは、このカット・アップに繋がるエディットという手法を解き明かしたエディット・レコード・ディスク・ガイドだ。もちろんカット・アップについても触れられている。この手法に興味を持ったかたはぜひ手にとっていただきたい。今なら書店よりネットで中古本が安く手に入るはずだ。



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