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M|A|R|R|S ‎「 Pump Up The Volume」②

この曲は、このシングルより数ヶ月前にリリースされたEric B.&RakimI Know You Got Soul」のアカペラから「Pump Up The Volume」というラインをサンプリングしタイトルにした。

同年1月には、Steve "Silk" Hurley 「Jack Your Body 」がUKヒット・チャートに登場した。すでにアメリカでも大ヒットとなっていたこの曲を音楽業界の人間が見過ごすはずがない。すでにストック・エイトキン&ウォーターマンらがUKハウスと銘打って幾つかの楽曲をリリースしヒットさせていた。そんな状況を知ったM|A|R|R|Sメンバーである〈4AD〉レーベル・オーナー、Ivo Watts-Russellが他のメンバーにハウス・ミュージック、そして、爆発寸前の街角クラブ・シーンで盛り上がっていたレアグルーヴ(街角リリースのメガミックス・レコードも)を曲に取り入れようと進言した(John Fryer談)

レアグルーヴ(街角リリースのメガミックス・レコード)、そして、ディスコ〜クラブ発祥のハウス・ミュージック。街角レベルで大人気だったこの2つのエレメントを上手にすくい上げミックスして制作されたのがM|A|R|R|S ‎「 Pump Up The Volume」だ。

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しかし、レコーディングは大変だったようだ。AR KaneとColourboxはことあるごとに対立しレコーディングは進まなかった。プロデューサーのJohn Fryerも仲を取り持つことはできなかったらしい。その結果、Colourboxサイドが「Pump Up The Volume」の制作し(AR Kaneのギターをオーヴァーダビングし収録はしたが)、AR KaneがB面の「Anitina」を制作(Colourboxのビートは採用したが)した。コラボレーションとは名ばかりでそれぞれの作品として制作作業が進められたようだ。

「Pump Up The Volume」の制作したColourboxのMartin Youngについて、プロデューサーのJohn Fryerは語った。

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「Martinは、当時ヒップホップにのめり込み影響を受けていた。サンプリングを取り入れたんだ。この曲は、ドラムとベースラインに基づいており(ピアノもいくつかあり)、サンプリング・ネタを適切な場所に配置するだけで全てが機能した。僕は少しずつミキシングをしていた。ベースとドラムがキックしていることを確認して、スピーカーから出るときにトラックをどんどん鳴らした。そして、サンプリング・ネタがのることで曲になっていった。」

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スタジオ写真にAR KANEメンバーの姿はない。

彼らは、Martin Youngの友人で当時〈DMC Mix Championship〉UKチャンピオンだったCJ Mackintoshとクラブ・シーンで活躍していたDJ Dave Dorrellを招聘しスクラッチを収録した。CJ Mackintoshは当時のことをこう語った。

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「彼らは午前中に電話してきたんだ。そして、ロンドン・ブリッジの〈Blackwing Studios〉に行って、その日にすべてのサンプリング・ネタを(曲に)貼り付けたんだ。それで£200もらったよ。作業が終わるのはめちゃくちゃ早かった」。

なんとかレコーディングは済んだ。曲も完成した。しかし、さらなる問題が持ち上がった。Colourboxが、AR KANE「Anitina」を嫌い別々のシングルでリリースしてくれとIvo Watts-Russellに申し出たのだ。しかし、新曲を作る時間を待てなかったIvoはメンバーの要望を断り「Pump Up The Volume」と「Anitina」をカップリングでリリースした。続く、、、。

[参考資料]RollingStone.com,SongFacts.com,Wiki,infinit.net,soundonsound.com

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