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カセット・テープ考④

カセット・テープにまつわるあれこれを3回に渡って書いてきました。4回目は、今回「ラッパ我リヤ/ウルトラ・ハード」の公式カセット・テープ化にあたり、プレスを担当していただいた(株)東京録音の渡辺さんにお話を聞かせていただいた。渡辺さんは、80年代から現在までカセット・テープのプレス業者として営業されている。様々なソフトが登場しては消えて行くこの業界にあって、カセット・テープという言ってしまえば古いソフトにこだわり続けた職人ともいえる方だ。渡辺さん自身が撮影してくれた動画と共にカセット・テープのプレス工程を紹介します。

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今回、久々のカセット・テープ・プレスということで、まずはデュプリケーターについて教えてください。

ーこれは〈オタリ〉という国産メーカーのデュプリケーターなんですよ。高級外車くらいのお値段です(笑)。磁気テープ自体は韓国の〈セハン〉というメーカーのもので、もう生産中止になっていますね。マシンが壊れたときは、簡単な部品交換などは自分でやりますが、重要なメンテナンスはメーカーの担当さんに来てもらい直しています。〈オタリ〉は現存していますからね。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1gQBIk5UjXAQvOIon

なるほど。〈オタリ〉といえばマルチ・トラック・レコーダーで有名ですよね。MTR-90はプロ仕様のレコーダーで世界中のスタジオやメディアで今も使われいるはず。あのレベル・メーターが一杯並んでるの格好いいんですよね。あのマシンも1000万くらいでしたよね。あ、下世話な話ですみません。続いてカセット・テープを制作する工程ですが、、、

ー(笑)まず、プリント用のCDマスターから磁気テープに音を高速でコピーしていきます。コピーが終わったら、高速で磁気テープに書き込みますのでチェックする機械でバランスと音量が正常かどうか確認します。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1fFb5LeR_EMAHsXU

チェック・マシンがあるんですね。どうやって正常か見分けるんですか?

ーチェック・マシンでカセット・デッキと同じスピードで再生して耳での確認、長年の経験での判断ですね。ここでダメだったらコピーし直します。チェックが終わったら、磁気テープを1本ずつカセット・テープに巻き込みします。上段に磁気テープの直径30センチくらいのロールがあるので、そこから下段に設置した空(中身が透明なテープしかない状態)のカセット・テープに磁気テープを1本分ずつ小分けして繋げていきます。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1faprr7yxNcCJC3c

1本づつですか!結構手間がかかるんですね。完成品の空カセットに何本も同時にダビングしていくのかと思っていました。

ーそこがコピー業者とうちとの違いなのかもしれませんね。そのあと、巻き込んだカセット・テープをアトランダムに取り出しレベル・チェックします。具体的には、カセット・デッキでレベルとテープ内容の最初と終わりが切れてないかチェックします。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1e3U03i5AJBsxQo4

ここではじめてカセット・デッキが登場するんですね。テープを聴く人と同じ状態で試聴すると。

ーそうですね。それでOKが出たら仕上がったカセット・テープに1本づつレーベルシールを貼っていき、ケースに入れて梱包して完成ですね。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1egD-v-xu9BNapzY

これも1本づつ貼るんですか?手間かかりますね。全てのカセット・テープに手を入れてるってことですね。出来上がったテープに愛情みたいなものが出てきますね。カセット・テープの良さってなんですかね?

ー古いアイテムですが その分蓄積された技術がある気がしますね。音が良いかどうかは個人の好みによっても違うと思いますが 音域が狭い分そこだけ洗練されるイメージが良いのかもしれません。

https://1drv.ms/v/s!AopIdPjQZxY1fsJ0KG51HQj0EGg


全盛期は、一晩中ぶっ通してプレス作業にあたっていたという渡辺さん。現在もカセット・テープ1本1本手間をかけてプレスしている。それは流行り廃りとは関係ない、渡辺さんのカセット・テープに対する愛情にほかならない。その愛情がカセット・テープとその中につまった音楽をよりよいものにしているのはないでしょうか。もし、カセット・テープを作ってみたいと思う方がいらっしゃればDELIC RECORDSに是非ご相談下さい。


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