トランクはもうひと回り小さめに/沢野ひとし
日常から逃れられる海外旅行は、準備の段階から気分が一気に上がるものだ。旅に出ると決まれば、新しいシャツや旅行バッグを購入し、旅の夢を膨らませる。初めてパリに行った時は、一夜漬けの覚悟でフランス語教材を書店で求め、勉強した。
そうして迎えた出発の日、家を出るのは、いつもまだ薄暗い早朝である。リムジンバスに乗っている時や、空港のチェックインカウンター前でぼんやりしている時から、すでに日常は遠くなる。
大きなトランクを預け、搭乗チケットを受け取ったら、機内持ち込みバッグを肩