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『成瀬は天下を取り、信じた道をいく』

現在わたしは31歳。
成瀬のことが心から好きだ。

しかし思春期真っ盛りの自分ならどうだろう。
もっと遡って、“普通”が求められる小学生の自分ならどうだろう。

成瀬を受け入れる柔軟さを持っていただろうか。
“島崎みゆき”になれていただろうか。——



ある日ふとインスタグラムを眺めていると、
ラジオDJが『成瀬は信じた道をいく』という本を紹介していた。

そこには「主人公成瀬の意表を突く行動にゲラゲラ笑わされた」とあり、
「去年話題になった『成瀬は天下を取りにいく』の続編」とのことだった。

ならばと思い、一作目を購入した。

“変わり者で何でも天才的にこなすことができる主人公成瀬”と、
“彼女と同じマンションに住む幼なじみ島崎みゆき”の中学〜高校時代が描かれた小説だった。

ラジオDJ同様ゲラゲラ笑いながら読み進め、即続編かつ新作の『成瀬は信じた道をいく』を購入した。
こちらは高校〜大学時代が描かれていた。

成瀬の行動、巻き込まれる周囲の様子は非常に面白かったのだが、ただの面白い小説で終わらせることはできなかった。

冒頭で書いた
“過去の私は成瀬と友達になれていたか問題”
が頭から離れないのだ。

成瀬の親友“島崎みゆき”への嫉妬心まで芽生えてしまった。

成瀬の行動はぜひ小説で確かめてほしいので詳細は伏せさせてもらうが、
思春期真っ盛りにあの行動に付き添えること、
—もちろん島崎みゆきに恥じらいはあるし、小学生時代は成瀬を避けていたこともあったのだが—それだけで十分島崎みゆきは良い意味で異質なのだ。

私が成瀬的人物に出会ったのは大学生になってからだし、そういう友達もできたが、
ポイントなのは“思春期である”ということにある。

あの頃はやはりどうしても目立ちたくなかったり、何事も恥ずかしかったり、
とにかく普通にしていたかったように思う。

私も島崎みゆきになり、成瀬と共に自分史の中の思春期に歴史を刻めていたら、当時の捉え方は随分と変わっていただろう。

しかし過去の自分に不満があるわけでも、
ましてや今の自分に不満があるわけでもない。
もし過去に戻れたとしても、私はまたどうしようもなく思春期するだろう。
でも私も私なりに色々な経験を経て、成瀬と島崎よりは遅れたけれど、殻を打ち破ることはできた。はずだ。

この2人への嫉妬心は消えないけれど、
私は私で天下を取りに行くし、信じた道を行こうと思う。

そして願わくば、
成瀬の社会人編を覗かせてもらいたい。

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