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猫日記ーお手洗いに籠城する猫ー

「僕だけを見て」「僕だけに構ってちゃん」な我が家のみるく(4歳、男子、やや肥満体)。

人間ならば、そんな野暮なセリフを口にして相手の気を引くこともできようが、いかんせん、言葉をしゃべることのできない猫の場合、そうは問屋が卸さない。

ある時は窓越しに、またある時はドアの陰から「ひょっこりはん」のごとく、こちらをそっと見つめてその切なる思いをアピールする。

だけど、その視線に気づいたからと言って、私から猫を追いかけてしまうのはNGだ。猫は生まれながらのハンターなので、いつも自分から「追いかけていたい」「獲物を狙っていたい」のだ。

ところで、この「僕だけに構ってほしい熱」がピークを越えると、彼はお手洗いに籠城する。と言っても、猫砂の詰まった猫用トイレではなく、人間用のお手洗いに立てこもる。

猫による「トイレ・テロ」だ。

テロと言っても、銃を乱射するわけでもなく、飼い主におやつの増量を求めて拡声器で演説するわけでもない。バリケード封鎖なんてもってのほかだ。
彼の要求は、ただ、こんな場所にこっそり隠れている自分に気づいてほしい、そして、飼い主に抱っこしてもらいながら「みるくちゃん、すごいね!カッコいいね!」と甘い言葉を囁いてほしいという、いたってLOVE&PEACEな可愛いテロリストである。

ちなみに、猫が右手を使ってちょいちょいと器用にひっかけば、いとも簡単にお手洗いの扉は開く。猫にしたら朝飯前、お茶の子さいさいの所業だ。

基本、家中のお部屋すべてが自分のテリトリーである猫だが、この人間用お手洗いだけは普段、入ることを固く禁じられているので、彼にとっては魔境ゾーンとも言える。ここに一歩、足を踏み入れれば、飼い主が矢のごとく飛んできて、「みるくちゃん、メッ!でしょ」と甘え声で叱りながら、おもむろに抱っこされるのを猫は知っているのだ。

だが、たまに、この猫の「トイレ・テロ」に気づいてあげられない時がある。

だいぶ時間が経ってから、ふとお手洗いの扉が5センチほど開いているのに気づいて慌てて扉を開けるも、既に猫の姿はなく、3センチほどの猫の白い毛が床に落ちていることがある。
事件現場に残された紛れもない証拠のごとく。

「籠城してみたけれど、飼い主に見つけてもらえずに寂しくて、ちょっとやさぐれ気分でお手洗いを出て、電気の消えた真っ暗な部屋の段ボールの中でふて寝している猫」を見つけた時は、なんともいえない愛おしさが胸の中にじわじわと湧き上がってくる。

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猫のみるく(大きなカメラを向けたのでやや不安げな表情)


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