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傘がない。

そろそろ梅雨明けの気配。
朝からシトシト降っていた雨が止んだ週末の夜、「チャンス!」とばかりにウォーキングに出かけると、空の向こうがピカッピカッと光っている。雷かな? と思うものの、まるで花火で夜空が一瞬、明るくなるような光り方だったので、どこかで花火大会が開催されているのかも、なんて、このイベント自粛時期にもかかわらず呑気な思考が頭をよぎる。

ウォーキングの途中、スーパーに立ち寄って夏野菜や豆乳、炭酸水などを買って店を出ると、叩きつけるような土砂降りの雨、雨、雨。
ゴロゴロと不吉な音も鳴り響いている。
同じように傘を持たず買い物に来てしまった人が3名ほど、自分と同じように店の軒先で途方に暮れたようにぼんやりと空を眺めている。
やっぱりさっきのピカッは雷の前兆だったのだ。

しばらくスーパーの軒先で雨宿りするも、止みそうな気配があるような、ないような、はっきりしない優柔不断な男のような空もよう。歩いて帰れないこともないけれど、途中、またゴロッ、ピカッときてずぶ濡れになるのだけは避けたい。

ビニル傘を買って歩いて帰ってもいいのだけど、足元は確実に濡れる。
それも嫌だ。

結果、ひと駅、電車に乗って帰り、駅からはバスに乗って家まで戻った。

富山に住んでいた頃は「弁当忘れても傘忘れるな」と言われたくらい雨が多かった。どんなに晴れていても、バッグの中、車の中には必ず傘を常備していたっけ。いつの間にか傘を持ち歩くのがクセになった。

そのせいで上京する際はついつい長傘を持ってきてしまい、でも、雨がほとんどと言っていいくらい降らない東京では「無用の長物」になることが多々あった。

ピアスと同じでお気に入りを買っても必ずなくしてしまうのが傘。どうせなくすのならビニル傘でもいいじゃないか、と言われそうだけど、いい大人がビニル傘を持つのも無粋な気がして、万一、置き忘れても胸がしくしく痛まない程度の、そこそこ高値でないものを購入している。

お気に入り以外、妥協することなく一切、身に着けなかった向田邦子さんとはえらい違いだ。

自分で書いておきながら、そういう、中途半端なところで妥協するあたりが自分のダメなところだと思う。こういう物への姿勢は、生き方や人生、自分のえらび方にも通じるような気がするのだ。

他人からは「こちら、頑固でこだわりが強いデコネコさん」と第三者に勝手に紹介されてしまう私だが「はて?この程度で頑固者か?」と不思議に思ったりする。


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