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小説『虹の振り子』

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中編小説『虹の振り子』をまとめています。 国際結婚と家族の物語です。
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小説『虹の振り子』<全文>

【本作品は、2021年8月より連載を続け、先日、完成した『虹の振り子』を#note創作大賞に応募するため、加筆修正したものです。】 * * * * * <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄      鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉   鳥越瑛人:玲人の息子   鳥

小説『虹の振り子』20

第1話から読む。 前話(19)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)    鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 03  ――この屋敷を残したい。  その思いは、玲人にもあった。叔父は最後まで口にはしなかったけ

小説『虹の振り子』19

第1話から読む。 前話(18)から読む。 * * * * * 第4章:虹――<スイング> 02  翔子の困惑など素知らぬげに、庭の青紅葉の枝で四十雀が甲高い鳴き声をしきりにあげていた。  いつもは深く濃く凪いでいる翔子の黒目がちの瞳が、視点が定まらずに泳いでいるのを、玲人は認めた。幼いころから翔子は動揺すると瞳が泳ぐ。翔子が何を懸念しているのか、胸のうちが手にとるようだと、玲人は思った。 「叔父さん、ここからは、僕が」  玲人が啓志に目くばせする。 「どの順で話したものか