フォローしませんか?
シェア
第1話(01)から読む。 前話(05)から読む。 <登場人物> 翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父 芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母 芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父 ジャン:翔子の夫(イギリス人) * * * * * 第2章:父ーグラウンド 02 春の海のような人だと思った。 はじめて朋子に会ったのは嵐山の料亭だった。淡い縹色の訪問着がよく似合っていた。庭の桜が風に舞って二、三片うすい水色のきものの肩に乗った
第1話(01)は、こちらから、どうぞ。 前話(02)は、こちらから、どうぞ。 * * * * * 第1章:翔子ーフライト03 この国には勉強をしに来たのだからと。はじめは頑なにあらがっていた翔子だったが、ひとりで異国の地にいる寂しさがあったことは否めない。 その冬一番の冷え込みになった朝、部屋のヒーターが故障していることに気づいた。イギリスの冬は寒い。セーターを重ね着しマフラーを巻いて布団にくるまったが、それでも、古い安アパートの窓のすき間から容赦なく侵入してくる冷気
第1話(01)は、こちらから、どうぞ。 第1章:翔子ーフライト02「ブレックファストだよ」 ジャンに耳もとでささやかれて、我に返った。 どうやらいつの間にか再び眠りに落ちていたらしい。朝焼けの雲海を眺めながら、遠い日の追憶にふけっていたように思っていたのだが、どこからが夢だったのだろうか。 ジャンと出会ったのは、ロンドンに留学してまもないころだ。 その朝は寝坊してあわてていた。キャンパス前の信号がウォーキングに変わるのを、せわしなく足踏みしながら待っていた。信号が