マガジンのカバー画像

100字物語「少年のさがしもの」

100
毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
運営しているクリエイター

#超短編小説

100字物語「少年のさがしもの」#第41話

少年は兆しを探していた。薄曇りの朝。雲の絶え間から銀波へと一条の光が降りて来る。海に臨む天満宮。梅紋の絵馬が、一陣の風にカタカタと連符のリズムを刻む。猫が鈴を鳴らす。手水舎に梅の花びらが浮かんでいた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 #超ショートショート #超短編小説 #短編小

100字物語「少年のさがしもの」#第42話

少年は循環を探していた。嵐のあとの海辺を歩く。打ち上げられた海藻が浜に赤紫の抽象画を描く。流木。干からびたカシパンウニ。コウイカの殻。漂着物。海に駆け足で帰る蟹を猫が追いかける。虹が空に梯子をかけた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第43話

少年はルートを探していた。新興住宅地のはずれ。田と畑と家並みがパッチワークを描く。春の雨に濡れた土手に、タンポポが黄色の模様を添える。目覚めたばかりの蜥蜴を猫がいたぶっている。雲雀が空に舞い上がった。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第44話

少年は憧憬を探していた。平日のヨットハーバー。マストが天に向かって整列敬礼する。面舵一杯で錆色の海原へ。うねる波を5ノットで切り裂こう。風はセーリングに打ってつけだ。岸壁で見る春の夢。猫があくびする。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第45話

少年は期待を探していた。初めての青春18切符の旅。田園を各駅停車で走る。土手で手を振る菜の花。車窓を駆けてゆく春。一眼レフを持って無人駅に降り立つ。ホームの割れ目から蒲公英が空を仰ぐ。猫の恋の季節だ。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第46話

少年は希望を探していた。校門前の桜並木。風に花びらが舞う。裾がだぶつく真新しい制服。スーツ姿の保護者がさんざめく。去年の自分がフラッシュバックする。制服の丈はもうぴったりだ。桜吹雪に猫がダッシュする。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m355fc166d61f? また、「少年のさがしもの」をベースにした長編連載小説をはじめました。 思春期の入り口でとまどう「少年」朔の成長物語です。よろしければ、こちら

100字物語「少年のさがしもの」#第47話

少年は調和を探していた。放課後の中庭。音楽室から吹奏楽部の演奏が降って来る。不安定なサックスは新入部員だろう。『宝島』の旋律が葉桜を揺らす。尻尾を立てリズムに合わせたキャットウォークが塀の上を横切る。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m355fc166d61f? また、「少年のさがしもの」をベースにした長編連載小説をはじめました。 思春期の入り口でとまどう「少年」朔の成長物語です。よろしければ、こち

100字物語「少年のさがしもの」#第48話

少年は彼方を探していた。海からせり上がる山の頂。海風が葉擦れを奏で、木漏れ日が若葉を乱反射させ踊る。霞たなびく島影を見下ろしながら、コンビニのおにぎりを齧る。木の根道を走る蜥蜴に猫が目を光らせていた。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m355fc166d61f また、「少年のさがしもの」をベースにした長編連載小説をはじめました。 思春期の入り口でとまどう「少年」朔の成長物語です。よろしければ、こちら