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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#友情

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第53話

日曜の朝、幼なじみの蓮が来た。籏山に登ろうという。蓮の誘いは小学校以来だ。誘った理由を蓮は言わない。振り返って笑うだけ。僕らは並んで海を眺める。額の汗が光る。時の彼方に答えはあるのか。それが知りたい。    <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせて、お楽しみください。 51話からは、舞台

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第54話

音楽室の前を通ると、吹奏楽部の不協和音が廊下を震撼させていた。扉の隙間から覗くと、蓮が窓際で一人サックスを吹いている。パート練習だろうか。一人なのが、朔は気になる。調和って何だろう。個性って何だろう。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆に

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第56話

3連休に今度は朔が蓮を青春18切符の旅に誘った。薄が金色に揺れている。各駅停車でバカ話ばかりが弾む。聞きたい言葉は、風に連れ去られる。不安は期待の裏返しだと兄貴が言っていた。どこかで猫の鳴き声がした。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第59話

台風一過の砂浜に四つん這いの人影が。顔をあげると同じクラスの青山だ。「朔か。何してる」訊きたいのは、こっちだ。「嵐の後の浜は宝の山さ」と戦利品を掲げる。海は地球を循環している。父さんの言葉を思い出す。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』第60話

シロップと天満宮の鳥居をくぐる。振り返ると、海が光っている。昨日、蓮から吹奏楽部を辞めると聞いた。兆しは感じていたけれど。ポケットの五円玉を賽銭箱に投げる。学問の神様でもいいか。蓮を想って柏手を打つ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第62話

鎮守の森の崖から海に向かって蓮が叫ぶと、藪から何かが飛び出した。青山だ。「蓮か。びっくりさせるな」こっちのセリフだ。葉っぱだらけの頭でキノコを持っている。可笑しさに触発され、蓮は悩みを忘れ大笑いする。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第63話

ホームルームは席替えだった。湊さんともお別れか。新しい席は窓際の前から3番目。肩を叩かれ振り向くと青山だ。その右隣には蓮。満足していると「今度は隣ね」と湊さんが机を置く。胸が跳ねる。まずは対話からだ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第64話

橋にもたれ朔が蓮に話しかける。「蓮はサックス、俺はギターで。文化祭で演奏しないか」「えっ?」蓮が驚く。「自主演奏の部でさ」「俺もやりたい!」河原に降りてた青山が手を挙げる。3人で可能性の源を探そうぜ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第66話

蓮が海に向かってサックスを吹く。朔がギターを奏でる。青山はマラカスを振り、洗濯板をバイオリンみたいに顎に挟んで掻き鳴らす。笑い声が空に弾ける。波に挑むサーファー。3人の挑戦もはじまる。潮騒が応援する。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第67話

自転車で湖のキャンプ場をめざす。3人で練習合宿だ。「楽譜なんて数式みたいなものさ」と青山が曲をアレンジ。パーカッションの腕前は今イチだけど。焚火がはぜる。コッヘルを叩いてリズムをとる。ドラマが始まる。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第70話

放課後グラウンドを通ると、「3オン3しようぜ」と声がかかる。「お前ら最近なにやってんの?」「文化祭で自主演奏するんだ」。蓮がドリブルですり抜け、青山にパス。最後は朔がシュート。3人の軌道が段々重なる。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第71話

朔の家で最後の音合わせ。文化祭は明日だ。「この2か月楽しかったな」と蓮。「間違えても気にしないでやろう」と朔。「楽しめばいいじゃん」と青山。俺たちのサンクチュアリはここにある。シロップもにゃあと鳴く。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第72話

文化祭の舞台。青山がマラカスでリズムをとる。朔は弦に指を走らす。蓮がサックスを轟かす。心臓が120ビットで鼓動を刻む。手が胸が熱くなる。拍手と笑いが体育館をゆらす。動機はちっぽけでも響く旋律となった。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第73話

シーズン前のゲレンデを3人で登る。文化祭の興奮とエネルギーが燻る。「クリスマスコンサートしないか」と青山。「いいな」「やろう!」朔と蓮が叫ぶ。初雪が舞う。まずは草そりレースだ。俺たちのロック魂も舞う。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話