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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#100字ぴったり

100字物語「少年のさがしもの」#第31話

少年は軌道を探していた。忘れられたバスケットボール。拾ってゴールを睨む。幻のディフェンスをかわしながらリング下からレイアップだ。鋼の縁に強打して曲線で跳ねた。猫がリバウンドを追い駆ける。鷹が旋回する。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第34話

少年はドラマを探していた。湖のキャンプ場。漆黒から紺青のグラデーションを描く天。雲が墨を流したように透け、星が動く。南の宙で天狼が目を光らせている。コッヘルでコーヒーを沸かした。猫が焚火の傍らで蹲る。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第35話

少年は挑戦を探していた。誰もいない冬の浜辺。白い雄叫びをあげてうねる波。すぐに消し去られる猫の足跡。サーファーがひとり灰白色の空を背に、砕け散る荒波と格闘している。潮騒のリフレインが応援歌を轟かせる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第37話

少年は源を探していた。小川にかかるコンクリートの橋。錆の浮いた欄干。川面で光が跳ねて踊る。せせらぎは遠く、軽トラがタイヤを軋ませて通り過ぎた。見下ろした河原ではエノコログサの一群れと猫が格闘していた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第38話

少年は対話を探していた。教室が微熱を帯びる2月。期待と落胆の嵐が吹き荒れる日がやって来る。朝から甘い匂いに浸食される脳髄。恋愛は未知の領域。数学よりも理解不能。義理でもいいさ。猫まで女子に媚びを売る。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第39話

少年は触発を探していた。鎮守の森の遊歩道を駆け上がる。風はバイオリンの弓のよう。樹々の葉ずれを奏でる。コーダで繰り返す波の諧調。藪を抜けた崖の先でハーモニカを海に向かって吹く。猫がハイキーで伴奏する。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第40話

少年は日常を探していた。アーケードの続く商店街。シャッターの閉まった店がパッチワークで散らばる。青果店の隣のコロッケ屋で買い食いをする。生徒指導の巡回はないな。魚屋の大将が猫に煮干しを投げて寄こした。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第41話

少年は兆しを探していた。薄曇りの朝。雲の絶え間から銀波へと一条の光が降りて来る。海に臨む天満宮。梅紋の絵馬が、一陣の風にカタカタと連符のリズムを刻む。猫が鈴を鳴らす。手水舎に梅の花びらが浮かんでいた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 #超ショートショート #超短編小説 #短編小

100字物語「少年のさがしもの」#第42話

少年は循環を探していた。嵐のあとの海辺を歩く。打ち上げられた海藻が浜に赤紫の抽象画を描く。流木。干からびたカシパンウニ。コウイカの殻。漂着物。海に駆け足で帰る蟹を猫が追いかける。虹が空に梯子をかけた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第44話

少年は憧憬を探していた。平日のヨットハーバー。マストが天に向かって整列敬礼する。面舵一杯で錆色の海原へ。うねる波を5ノットで切り裂こう。風はセーリングに打ってつけだ。岸壁で見る春の夢。猫があくびする。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第45話

少年は期待を探していた。初めての青春18切符の旅。田園を各駅停車で走る。土手で手を振る菜の花。車窓を駆けてゆく春。一眼レフを持って無人駅に降り立つ。ホームの割れ目から蒲公英が空を仰ぐ。猫の恋の季節だ。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。

100字物語「少年のさがしもの」#第46話

少年は希望を探していた。校門前の桜並木。風に花びらが舞う。裾がだぶつく真新しい制服。スーツ姿の保護者がさんざめく。去年の自分がフラッシュバックする。制服の丈はもうぴったりだ。桜吹雪に猫がダッシュする。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m355fc166d61f? また、「少年のさがしもの」をベースにした長編連載小説をはじめました。 思春期の入り口でとまどう「少年」朔の成長物語です。よろしければ、こちら

100字物語「少年のさがしもの」#第47話

少年は調和を探していた。放課後の中庭。音楽室から吹奏楽部の演奏が降って来る。不安定なサックスは新入部員だろう。『宝島』の旋律が葉桜を揺らす。尻尾を立てリズムに合わせたキャットウォークが塀の上を横切る。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m355fc166d61f? また、「少年のさがしもの」をベースにした長編連載小説をはじめました。 思春期の入り口でとまどう「少年」朔の成長物語です。よろしければ、こち

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第59話

台風一過の砂浜に四つん這いの人影が。顔をあげると同じクラスの青山だ。「朔か。何してる」訊きたいのは、こっちだ。「嵐の後の浜は宝の山さ」と戦利品を掲げる。海は地球を循環している。父さんの言葉を思い出す。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50話