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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#思春期

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第55話

生活委員の当番で校門前に立つ。なんで朝早くから、知らないヤツに挨拶しなきゃいけないんだ。あくびをしたら教師に頭を小突かれた。湊さんが笑いながら通り過ぎる。教室で話せるかな。ささやかな希望が、風に舞う。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさか

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第56話

3連休に今度は朔が蓮を青春18切符の旅に誘った。薄が金色に揺れている。各駅停車でバカ話ばかりが弾む。聞きたい言葉は、風に連れ去られる。不安は期待の裏返しだと兄貴が言っていた。どこかで猫の鳴き声がした。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第57話

放課後ヨットハーバーをぶらつく。帆を張って海原を走る夢を見る。「乗りたいか」驚いて振り向くと、潮に灼かれた見知らぬ顔。うなずくと「体を鍛えるんだな」と笑う。船乗りの父さんが帰って来る。憧憬を見つけた。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り    (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみくださ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第58話

新興住宅地へと続く坂を塾のバスが走り去る。「塾に行け」と母さんは言わない。でも、みんな行ってる。朔は土手に座って空を見上げる。塾の先にやりたいことは見えない。ルートは一本じゃない。父さんは言うけれど。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) リターン篇は50話までと対になっています。 この話の表面(A面

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第63話

ホームルームは席替えだった。湊さんともお別れか。新しい席は窓際の前から3番目。肩を叩かれ振り向くと青山だ。その右隣には蓮。満足していると「今度は隣ね」と湊さんが机を置く。胸が跳ねる。まずは対話からだ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第64話

橋にもたれ朔が蓮に話しかける。「蓮はサックス、俺はギターで。文化祭で演奏しないか」「えっ?」蓮が驚く。「自主演奏の部でさ」「俺もやりたい!」河原に降りてた青山が手を挙げる。3人で可能性の源を探そうぜ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第74話

数学の授業中、隣からメモが。湊さんの丸い字で「また、何かするの?」朔はそっと横を向きうなずく。青山が背中を小突く。音楽と数学は似てると青山はいう。そう考えると数学も面白い。変化は思わぬ形でやって来る。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第85話

冬休みの最後の日。3人で海の見える駅にいた。「これからどうする?」「もうすぐ3年だもんな」「受験勉強か」「志望校どうしよっか」地図は自分たちで作ればいいんだ。わかっているけど、難しいよな。海がうねる。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第99話

蓮とブランコに座る。風が冷たい。船乗りの学校があるんだ。母さんが見つけてくれた。でも、寮暮らしになるから迷ってると言うと。蓮がブランコを大きく漕ぐ。羅針盤が指す方角はわかっている。勇気だけが足りない。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第100話 <完結>

シロップと夕陽に染まる突堤を行く。海の先に知らない世界がある。「フェンスはいいぞ」父さんが言った。向こうにある夢が見えるだろ。フェンスは超えるためにある。僕はずっとフェンスを探していたのかもしれない。 (The End) * * * * * 一年ちょっとかけて連載していた、<100字物語『少年のさがしもの』>を なんとか100話まで書き終えることができました。 毎回、100字で描写すること。 それがルールでした。 50話までは、100字での風景描写。 51話からは、10