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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#100文字ドラマ

100字物語「少年のさがしもの」#第50話

少年は鼓動を探していた。海神を祀る神社の参道に露店が並ぶ。砂利を踏む浴衣のさんざめき。天を揺らす咆哮をあげ、海から大輪の花火があがる。夜空に咲いては散る幾輪の輝き。火薬の匂いと熱気。猫が肩に跳び乗る。 (to be continued) ようやく折り返しの50話となりました。ここから話を逆に戻っていくつもりです。少年の迷いや放浪がどう続くのか。お楽しみください。 これまでのストーリーは、こちらから、どうぞ。 https://note.com/dekohorse/m/m

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第53話

日曜の朝、幼なじみの蓮が来た。籏山に登ろうという。蓮の誘いは小学校以来だ。誘った理由を蓮は言わない。振り返って笑うだけ。僕らは並んで海を眺める。額の汗が光る。時の彼方に答えはあるのか。それが知りたい。    <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせて、お楽しみください。 51話からは、舞台

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第54話

音楽室の前を通ると、吹奏楽部の不協和音が廊下を震撼させていた。扉の隙間から覗くと、蓮が窓際で一人サックスを吹いている。パート練習だろうか。一人なのが、朔は気になる。調和って何だろう。個性って何だろう。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆に

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第55話

生活委員の当番で校門前に立つ。なんで朝早くから、知らないヤツに挨拶しなきゃいけないんだ。あくびをしたら教師に頭を小突かれた。湊さんが笑いながら通り過ぎる。教室で話せるかな。ささやかな希望が、風に舞う。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさか

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第56話

3連休に今度は朔が蓮を青春18切符の旅に誘った。薄が金色に揺れている。各駅停車でバカ話ばかりが弾む。聞きたい言葉は、風に連れ去られる。不安は期待の裏返しだと兄貴が言っていた。どこかで猫の鳴き声がした。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第57話

放課後ヨットハーバーをぶらつく。帆を張って海原を走る夢を見る。「乗りたいか」驚いて振り向くと、潮に灼かれた見知らぬ顔。うなずくと「体を鍛えるんだな」と笑う。船乗りの父さんが帰って来る。憧憬を見つけた。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り    (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみくださ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第58話

新興住宅地へと続く坂を塾のバスが走り去る。「塾に行け」と母さんは言わない。でも、みんな行ってる。朔は土手に座って空を見上げる。塾の先にやりたいことは見えない。ルートは一本じゃない。父さんは言うけれど。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) リターン篇は50話までと対になっています。 この話の表面(A面

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第59話

台風一過の砂浜に四つん這いの人影が。顔をあげると同じクラスの青山だ。「朔か。何してる」訊きたいのは、こっちだ。「嵐の後の浜は宝の山さ」と戦利品を掲げる。海は地球を循環している。父さんの言葉を思い出す。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』第60話

シロップと天満宮の鳥居をくぐる。振り返ると、海が光っている。昨日、蓮から吹奏楽部を辞めると聞いた。兆しは感じていたけれど。ポケットの五円玉を賽銭箱に投げる。学問の神様でもいいか。蓮を想って柏手を打つ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第61話

朔と蓮は商店街で買ったコロッケを頬張る。1年にサックスのうまいヤツがいてさ。蓮がぽつりと語る。文化祭のパートがそいつに決まったんだ。朔には言葉が見つからない。日常は変化する。それを僕らは時どき忘れる。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第62話

鎮守の森の崖から海に向かって蓮が叫ぶと、藪から何かが飛び出した。青山だ。「蓮か。びっくりさせるな」こっちのセリフだ。葉っぱだらけの頭でキノコを持っている。可笑しさに触発され、蓮は悩みを忘れ大笑いする。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第63話

ホームルームは席替えだった。湊さんともお別れか。新しい席は窓際の前から3番目。肩を叩かれ振り向くと青山だ。その右隣には蓮。満足していると「今度は隣ね」と湊さんが机を置く。胸が跳ねる。まずは対話からだ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第64話

橋にもたれ朔が蓮に話しかける。「蓮はサックス、俺はギターで。文化祭で演奏しないか」「えっ?」蓮が驚く。「自主演奏の部でさ」「俺もやりたい!」河原に降りてた青山が手を挙げる。3人で可能性の源を探そうぜ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第65話

シロップを自転車のカゴに乗せて運河に向かう。港のドックに建造中の大型タンカー。クレーンが何本も空を威嚇している。甲板はまだない。船はいいな。地図のない海に進路があるのだから。明日、父がまた航海に出る。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50