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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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2021年12月の記事一覧

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第90話

シロップを自転車の籠に乗せ、岬へとくねる坂道を3人で走る。崖下に広がる冬の海。朔が叫ぶ。蓮も叫ぶ。青山が笑い転げる。訳の分からない高揚と叫びを海風がさらう。俺たちはそれぞれの轍を見つけられるだろうか。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第91話

冬の陽ざしが暖かい河川敷。蓮が土手でサックスを吹く。志望校はまだ決まらない。でも、吹奏楽部にもう一回チャレンジしたい。ジャズもいいなと思ってる。だから、英語もがんばるよ。一瞬、蓮の翼が見えた気がした。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第92話

図書館に入る湊さんを見つけた。朔は追いかける。洋書の棚にいた。「読めるの?」「少しだけ。英語で歌えるようになりたいの」告白のこと聞きたかったけれど。湊さんにも目標がある。自分の背景だけがぼやけたまま。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第93話

昔、蓮と作った裏山の秘密基地に青山を誘う。枯葉を払って入口を探す。懐中電灯とリモコンが転がってた。この洞穴みたいに、先は暗くて見えない。だけど。トンネルはどこかに抜けるためにある、と父さんが言ってた。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第94話

船乗りになりたい気もするけど。父と兄の後を追っているみたいで嫌だ。でも、この海が世界に続いているなら、その先へ行ってみたいと思う。気持ちが波になる。朝焼けに染まる海。不協和音の旋律が頭の奥で鳴ってる。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第95話

三者面談で志望校は決めてないと言うと、今の成績ならこのへんだな、だってさ。帰り道、遮断機の降りた踏切前で「行きたい学校はないけど、なりたいものはある」と告げると、母が驚く。シグナルは伝わっただろうか。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第96話

祖父の工場まで自転車を飛ばす。祖父は現役で板金工場をやっている。父が継がなかったから、「俺の代でしまいさ。それでいいんだよ」と言う。大切なのはフレームじゃない。どんな写真を入れるかなんだと言って笑う。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第97話

古着屋への階段を昇る。去年、ここでジーンズを買った。この店を教えてくれた兄はオーストラリアだ。店の壁を撫でる。時は動いている。今、この瞬間も。古い物と新しい物。混じり合い新たな扉が開くのかもしれない。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第98話

外人墓地へ続く坂道を行く。錨形の墓標に土手で摘んだ花を置く。トビーの墓だ。トビーは父を船乗りへと導いた背の高い英国人船長だ。幼い頃、肩車をしてもらった。トビー、僕も船乗りになる。諦めないと約束するよ。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) ※この話に登場するトビーについては、こちらに

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第99話

蓮とブランコに座る。風が冷たい。船乗りの学校があるんだ。母さんが見つけてくれた。でも、寮暮らしになるから迷ってると言うと。蓮がブランコを大きく漕ぐ。羅針盤が指す方角はわかっている。勇気だけが足りない。   <登場人物>         朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ    湊さん:同じクラスの女子   青山:クラスメイトの男子 シロップ:朔の飼い猫      朔の父:遠洋タンカー乗り (to be continued) * * * * * リターン篇は50話まで

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第100話 <完結>

シロップと夕陽に染まる突堤を行く。海の先に知らない世界がある。「フェンスはいいぞ」父さんが言った。向こうにある夢が見えるだろ。フェンスは超えるためにある。僕はずっとフェンスを探していたのかもしれない。 (The End) * * * * * 一年ちょっとかけて連載していた、<100字物語『少年のさがしもの』>を なんとか100話まで書き終えることができました。 毎回、100字で描写すること。 それがルールでした。 50話までは、100字での風景描写。 51話からは、10