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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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2021年9月の記事一覧

100字物語「少年のさがしもの~リターン篇」#第51話

朔は海を眺める神社の石段を上がる。赤トンボが風に乗ってすぃーっと通り過ぎた。シロップが捕まえようとジャンプする。前の席の湊さんのシャンプーの匂いを思い出した。鼓動が早くなる。中学2年の夏休みが終わる。 <登場人物>    朔:主人公・中学2年  シロップ:朔の飼い猫       湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) 51話からは、舞台を逆にさかのぼります。 50話ー51話。49話ー52話。48話ー53話。‥‥と対になります。 1話~50話まで

100字物語「少年のさがしもの~リターン篇」#第52話

鎮守の森の大池。池畔で揺れる柳に光が反射する。さわさわと風にそよぐ湊さんの髪みたいだ。そう感じた自分に朔は戸惑う。シロップが小舟に跳び乗る。鈴虫が前奏をはじめた。密かな恵みの気配が胸にさざ波を立てる。 <登場人物>      朔:主人公・中学2年  シロップ:朔の飼い猫       湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさかのぼります。 50話ー51話。4

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第53話

日曜の朝、幼なじみの蓮が来た。籏山に登ろうという。蓮の誘いは小学校以来だ。誘った理由を蓮は言わない。振り返って笑うだけ。僕らは並んで海を眺める。額の汗が光る。時の彼方に答えはあるのか。それが知りたい。    <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせて、お楽しみください。 51話からは、舞台

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第54話

音楽室の前を通ると、吹奏楽部の不協和音が廊下を震撼させていた。扉の隙間から覗くと、蓮が窓際で一人サックスを吹いている。パート練習だろうか。一人なのが、朔は気になる。調和って何だろう。個性って何だろう。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆に

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第55話

生活委員の当番で校門前に立つ。なんで朝早くから、知らないヤツに挨拶しなきゃいけないんだ。あくびをしたら教師に頭を小突かれた。湊さんが笑いながら通り過ぎる。教室で話せるかな。ささやかな希望が、風に舞う。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさか

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第56話

3連休に今度は朔が蓮を青春18切符の旅に誘った。薄が金色に揺れている。各駅停車でバカ話ばかりが弾む。聞きたい言葉は、風に連れ去られる。不安は期待の裏返しだと兄貴が言っていた。どこかで猫の鳴き声がした。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子 (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみください。 51話からは、舞台を逆にさ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第57話

放課後ヨットハーバーをぶらつく。帆を張って海原を走る夢を見る。「乗りたいか」驚いて振り向くと、潮に灼かれた見知らぬ顔。うなずくと「体を鍛えるんだな」と笑う。船乗りの父さんが帰って来る。憧憬を見つけた。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り    (to be continued) この話の表面(A面)は、こちら。 あわせてお楽しみくださ

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第58話

新興住宅地へと続く坂を塾のバスが走り去る。「塾に行け」と母さんは言わない。でも、みんな行ってる。朔は土手に座って空を見上げる。塾の先にやりたいことは見えない。ルートは一本じゃない。父さんは言うけれど。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:朔の同じクラスの女子  朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) リターン篇は50話までと対になっています。 この話の表面(A面

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』#第59話

台風一過の砂浜に四つん這いの人影が。顔をあげると同じクラスの青山だ。「朔か。何してる」訊きたいのは、こっちだ。「嵐の後の浜は宝の山さ」と戦利品を掲げる。海は地球を循環している。父さんの言葉を思い出す。  <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50話

100字物語『少年のさがしもの~リターン篇』第60話

シロップと天満宮の鳥居をくぐる。振り返ると、海が光っている。昨日、蓮から吹奏楽部を辞めると聞いた。兆しは感じていたけれど。ポケットの五円玉を賽銭箱に投げる。学問の神様でもいいか。蓮を想って柏手を打つ。   <登場人物>        朔:主人公・中学2年  蓮:幼なじみ      シロップ:朔の飼い猫        湊さん:同じクラスの女子  青山:クラスメイトの男子 朔の父:遠洋タンカー乗り  (to be continued) * * * * * リターン篇は50