大河ファンタジー小説『月獅』50 第3幕:第13章「藍宮」(3)
これまでの話はこちらのマガジンから、どうぞ。
第3幕「迷宮」第13章「藍宮」(3)
シキの足が遠のいたのを寂しく思っていたころ、珍客はとつぜん現れた。
ラムザ王子の喪が明け、新年を迎えてまもないころだった。王族は新しい年を迎えるとひとつ歳をとる。カイルは十六歳になっていた。
藍宮の庭に石造りのささやかな泉がある。
その日は朝から晴れ、泉に張った氷も冬の日に溶けかけていた。泉のかたわらには蜜柑の木がたわわに実をつけている。ひとつもぎ採ろうとカイルが手をのばしたときだ