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想い 九十一首

【逢瀬】

覚えとる?
君と歩いた 川沿いの
桜の花は ほんま綺麗や


二人きり 桜の下の 息づかい
君の肩先 花びら踊る


桃の肌 ほんのり淡いピンク色
のぼりつめてく
あのときの君


うす桃に うつむく君の 眩しさは
僕の世界の光明となり


移り気な あなたの心 独り占め
庭に香るは 紫陽花の頃


紫陽花の 心もとなく 揺れるのは
あなたが触れた 優しさのせい


愛してる ただその言葉 聞きたくて
遠い目をするきみの眼差し


突然に 降り出した雨 傘の下
貴方の腕に 引き寄せられて


傘の下 2人の耳に 流れてた
雨の雫の 甘いつぶやき


夏祭り 人混みの中 手をひかれ
君の肩越し 花火の乱舞


見上げたら いつもの笑顔の君がいて
満開に咲く 真夏の花火


決めたんだ 次の花火が上がったら
あなたの頬に そっとくちづけ


琥珀色 浮かんだ氷 とけてゆく
グラスが触れる 音の向こうに


愛してる その言葉ごと くちうつし
甘いカクテル 胸に落ちてく


kissだけと せがむあなたの潤む目が
僕をどうしようもなくさせる


何日も 待っていたから もう少し
ジラしてやるの 意地悪をして


どこにある?スイッチONにするボタン
見つからないまま 君を抱いてる


メールより声より君に触れてたい
たとえ僅かな逢瀬であっても


大好きと書いたメールの着信音
君のコートのポケットの中


永遠に 離さないでと 約束の 
指切りげんまん ポケットの中


好き嫌い 続けるやめる 不安だけ
あなたの気持ち届かないから


落葉焚き ほくほくの 
焼き芋ほおばる きみは少年


もう一度 大きく手を振り歩き出す
貴方の背中 風が押してる


横顔に 見え隠れする 戸惑いも
ぼくが全部 受け止めるから


何もかも 移ろいやすいこの世なら
いっそふたりで壊れてしまおう


再開の 言葉少なく 見つめ合い
確かめ合うの 二人の時を


虹色に 冷えた心が 染まってく
貴方の辿る 指の痕から


夢うつつ 鏡の向こうで揺れている
君とぼくとが 月灯りの中


透き通る 月の光に 照らされて 
ふたりの影が 恥じらいながら


このままずっと甘えていたい 
潮の香りの貴方の胸で


君のその 涼しげな眼に 憧れて
共に歩むと決めた このみち


きみのまつげに滲む 涙色
雨の雫と そっと混じって


共に過ごした 優しい時間
あなたとでしか、辿り着けない


流れ星 いくつ数えて 君に逢う
その一瞬の 儚さ 秘めて


星空を ふたり見上げた あの夜の
熱い秘密の裏通り


コンビニで 働く君に逢いたくて
2杯目の朝の珈琲


優しさも ときに苦しくさせるだけ
知っていながら 溺れてゆくの


唇に 残ったきみの 息づかい
そっとなぞるの 紅の代わりに


今ここに きみを求める ぼくがいる
こたえなくとも あすがなくとも


おくれ毛を 絡めて遊ぶ 君の指さき
僕の背中に 搔き傷作り


テールランプ 涙の跡を照らしてる
さっき泣いてた 君の横顔


約束よ 百年経って 目覚めたら
目の前の君 僕だけのもの


言葉より 確かな事が 知りたくて
君のぬくもり もっと近くで


キャンドルの 炎が揺れる
君の目に 封印された イブの思い出


万華鏡 クルクル回る 色模様
君の気持ちの 明日みたいに


目覚めると 君と馴染んだタバコの香
夢と思えぬ キスのぬくもり


近くても 離れすぎても 苦しくて
晴れた日曜 木枯らしの吹く


いつの日か 咲き誇る時 
待ちましょう
今は小さな蕾であっても


送られて あなたの背中 遠くなる
また明日から 会えない時間


愛しくて そぼ降る雨に 濡れた君
黙って抱いた あの春の夜


【別れ】

貴方から メールのこない携帯が
迷惑メール着信してる

携帯に 残ったままの 貴方の文字に
一粒二粒 涙が落ちる

携帯に 残った君の伝言を
ずっと消せずに リピートしてる

顔文字で 本音を隠し キー叩く
乾いた涙 そのままにして

終電が 疲れた私を 運んでく
抜け殻だけが 帰るところへ


いつまでも 二人で見ると約束の
今年の桜 ひとり見上げて

頬つたう 涙のあとに 貼り付いた
桜の花と 君のぬくもり


ひらひらと 僕の肩先 かすめてく
舞い散る桜は 君の涙か

ためらわず 前に進めと 背中押す
春の桜と あなたの声が

君の小指に約束したね あの時
2人に 嘘は無かった

指切りげんまん あの時の小指の約束
覚えていてね

この夏の 過ぎた命を見送ろう
精一杯に咲いた恋詩

独り寝の 雨音だけが 子守歌
あなたの声を 思い出してる

疲れたの 貴方の影を追うばかり
シーソーゲームは もうジ・エンド

いつもの君の意地悪と 待惚け
永久の別れになるとも知らず

愛してるも 
サヨナラさえも言わないで
いなくなるのが 君の優しさ

天の川 遠い空から 逢いに来た
去年の夏を 思い出してる

形変え 月の満ち欠け 時を告げ
またひとりきり 夜道を歩く

七つ星 僕と思えと声がする
ひとりの道も そばにいるよと

夏だより 文字の間に見え隠れ
君の叶わぬ ため息一つ

リビングの 窓に射し込む月灯り
ふたりで見上げる 夢を見たのに

月灯り ふたつの影は揺れながら
何も言わずに 分かりあえてた

夜明け前 青く滲んだ 月見つめ
貴方を想い 風の音聴く

頬つたう 月の雫は 僕の指
すり抜け落ちた 君の幻

落ち葉踏み 並んで歩いた小路ゆく
今年は独り 君の想いを胸に秘め

茜色 あなたを染めし 思い出の
肩に一片 落ちた紅葉よ

砂浜に 2人でつけた 足跡を
初秋の波が 消し去ってゆく

秋風が 頬をかすめて 吹き抜けて
ふたりの胸に 残したものは

夕暮れの ふたつの影が 伸びてゆく
秋の気配に 戸惑いながら


いつのまに 秋色染めし 窓の外
あなたのいない 冬がまた来る


あなたへのあふれる思い尽きなくて
忘れられない 忘れたくない

君でなきゃ、君だったから
恋におちたと、カーラジオが歌ってる


拭っても拭っても 君の涙が
指の隙間をこぼれ落ちてく


いい女になってやるって約束だもの
涙を拭いて 顔をあげて


さようなら 運命という歯車の
私の夢に 足跡残し

満点の 星が見守る 聖なる夜に
離ればなれの ふたりの約束


雪かぶり 顔をのぞかせ 寒椿
今年の寒さ ものともせずに

私には必要だった あの頃の
ウソもホントも 貴方の全部

好きだよと 言えずにあの日 
呑み込んだ 消化不良のプロポーズ

笑顔しか思い出せない 夜空に消えた
星くずひとつ

除夜の鐘 遠くに響く 初詣
ふたりの足跡 積もる粉雪



#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門


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