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Rainbow Disco Club 2022 Moodymann と CYKによせて

去る2021年10月、コロナ禍があらゆる興行という興行を蝕んできたなか川崎市での開催となったRainbow Disco Club 2021は現在においても記憶に新しい。
快晴の空のもと錚々たる国内勢が顔を並べ、一旦は静止してしまったクラブ・カルチャーの新たな鏑矢を放った2日間だった。


RDC 2021年の閉幕とともに公式からもたらされたのは、「次年度は伊豆」との情報。どうやら例年のRDCは静岡空港から駿河湾を迂回した東伊豆にて開催されていたらしい。来年度は立花氏の如く本領土に返り咲くとのアナウンスだった。
踊り疲れ摩耗した脳を揺すりつつ、札幌への帰路すがらマップアプリを開いてみる。北海道から東伊豆にはどうやって……

  1. 札幌 → 新千歳空港 → 成田空港  → JR踊り子で伊豆稲取 → 会場

  2. 札幌 → 新千歳空港 → 東京 → レンタカーで伊豆稲取 → 会場

  3. 札幌 → 新千歳空港 → 静岡空港 →JRかレ……

……どう考えてもしんどい。キャンプ道具をこさえてこの道程を、GWの頭に? 考えるだけで胃に鉛が詰まっていくようだった。
徐々に明かされていく出演者のラインナップは異常なほどの厚みを持ち、一方で胸の高まりも詰まっていくばかりである。Moodymann、Motor City Drum Ensemble、Tornado Wallace、そしてTorei、Licaxxx、CYK。

しかし……とチケットのインフォメーションを繰り返し見ては逡巡を続け数ヶ月が立った頃、CYKのNariから思わぬ連絡が届いた。
「車で行こう」
立て続けに”行くなら一緒に行くぞ”と薄らぼんやりした約束を交わしていた東京の友人から思わぬ連絡が届いた。
「なんか友達が宿取ってくれたらしい」

!?
……この僥倖の重なりは間違いない。RDCが(チケット代を払えと)俺を呼んでいる。人の足で伊豆に赴き、人の宿でぐっすり眠るGW、これは間違いなく何かを”取り戻せる”と確信した筆者は熱い掌返しで伊豆行きを決心した。

おんぶに抱っこ・ディスコクラブ開幕の狼煙を瞼の裏に垣間見つつ、詰まりに詰まった高まりを咀嚼する日々を送れば、あっという間にGW前日が訪れていたのだった。





静岡県は東伊豆町にある東伊豆クロスカントリーコースにて開催されたRainbow Disco Club 2022は、4月30日〜5月1日の3日間、GWのド頭での開催となった。2019年以来の東伊豆開催である(らしい)とともに、4月開催ということもあり、改めてコロナ禍脱出の兆しが見え始めた2022年における野外フェスの先鋒と捉えることもできるだろう。

最寄り駅である伊豆稲取駅から車で約10分、急勾配の山をひたすら登り続けた先に会場がある。
入口からすぐ右手にそびえる大型の体育館はRedbull Stageという屋内会場となっており、Void Acoustic の INCUBUS という些か助平なお名前の、弩級サウンドシステムが設置されているという触れ込みだ(こちらは本年が初ではなく、2014年にも同イベントで採用されているとのこと)。

入口を直進して土手の下、左側を望むと長方形型に広い空間が開けられたメインフロア、RDC Stageが現れる。黒い巨大三角形のブースを眺めつつ数十歩の圏内にあるドリンク出店、喫煙所をぐるぐる往来できる非常に都合の良い構造となっており快適だ。

RDC Stage   写真より全然広い



RDC初日は残念なことに、事前に予報されていた豪雨・強風が確実視されたことから屋外ステージのトップバッターを務めるSisiを除き全出演者が屋内フロアRedbull Stageでのアクトとなるようタイムテーブルが再編されていた。

変更後のタイムテーブル




案の定正午を過ぎた頃から悪意溢れる豪雨が降り注ぎ、テントから顔を出すことさえ躊躇われる過酷な状況となった。

重い腰を上げ豪雨から逃げるようにRedbull Stageに駆け込むと、札幌で何度もDJを堪能させてもらっているSobrietyがブースに立っている。
複数ジャンルを縦断するセットから軽快なハウスにまとめ上げていく端正なセットはサウンドシステムの塩梅を確かめているようでもあり、初手から大変良いプレイを頂戴することが出来たと思わずキャッキャしてしまう。

続いて重厚なキックとともに現れ太い足腰を展開したMonkey-Timers、跳ねるような音の差し引きで自在に聴衆をコントロールしていたGE-OLOGYと続き……





初日の全てを掻っ攫っていったのは、同日に出演されていたDJ諸氏には大変恐縮ではあるのだが、やはりMoodymannだっただろう。
どれくらいの衝撃だったかと言えば……つまるところ即日の「殿堂入り」である。パーティにありがちな「誰が一番良かったか」談義の俎上にさえ乗せることができないほどに。
バンドセットで現れるのではないか、ソファに女性を侍らせて寛ぐのではないか、身体を横たえてDJを行うのではないか……海を超える前から抱いていた諸々の妙な予感を眼前で全て払拭したMoodymannは、よもや、と口から声が漏れるほどの実直なDJセットをフロアに叩きつけてくれた。

ギャングスタラップ周辺から封が切られた彼のセットはビッグビート、アマピアノ、ブレイクスを超えダウンビートからロウハウスへ、そして待望のディープ・ハウスゾーンへと突入していく。
2曲に一回程度挿入されるMoodymann本人の語り(イケボ)から強制的に発生する断裂はどんなにかけ離れたジャンルの境界線をも馴染ませ、一本筋の通った脈として隆起していく様がこの目にもハッキリと見える。

そして芸術的な型崩れだけでなく何より驚異的なのは、Moodymannの舞台となった巨大な体育館全体が彼の臓物であると錯覚されるかのように有機的な音使いであった。
Void Acoustic の INCUBUS サウンドシステムが採用されていたこと、感染対策により巨大な体育館であるRedbull Stageの全面がフロアとして解放されていたこと(例年は前半分のみとのこと)、悪天候により野外メインフロアが閉鎖されMoodymannが急遽Redbull Stageでのアクトとなったこと……偶然にしては都合の良すぎる調和であったように思う。

INCUBUSとは初の御対面だったが、特に中域が肉厚な板のように破壊的な飛び方をする。
これに体育館という密閉環境が重なることで、フロアの中心部に立てば暴力的な反響をもってキックの核がコンマ1秒遅れで腹に届く、というのがRedbull Stageの印象だが……Moodymannはこの特性を瞬く間に我がものとし、あらゆる聴衆が飲み込まれる大いなる波を生み出し続けたように思えた。

「今のトラックリストを全部フラットで通したら退屈なんだろうね」とごく当たり前な感想が何度も口を通ってしまうほどのダイナミズムが提示された今、キャリアを重ねた彼からなお聴衆に「確認」ではなく有る種の革新が叩きつけられた今、後続の若き出演陣には……強烈な左フックなのだろうな、と素人ながらに合点する。






いつまでも聴衆に手を振り続けるMoodymannを横目にフロアを出ると、明日時を同じくしてRedbull Stageに立つCYKの面々が揃って顔を突き合わせていた。浮かべている笑みが心なし硬く目に映る。背中にはMoodymannから間もなくブースを引き継いだLicaxxxの、重たげな筈のスロットルを出だしから最前に傾けたような圧が張り付いてくる。
幾度もの舞台を踏んできたCYKの心情を測る術は持ち合わせていないのだが……初日の21時、その時点をもってして明日彼らの立つ場所が「大舞台」であると決したことは間違いないだろう。
良くも悪くも、何千人もの聴衆が等しく精を吸い取られた一刻前の舞台と、彼らが明日作り出すそれは我々聴衆にとって水平だ。
明日はどんな一日になるのだろう、どんな転がり方をするのだろう……勝手な緊張を覚えつつ、二、三言彼らと言葉を交わし別れる。





(個人的に)珍しくコード感溢れるLicaxxxを1時間ほど堪能したのち、宿で待つ布団の感触を確かめたくなってしまった筆者は大荷物を担ぎ何の疑いもなく明かりの一つもない山道を降り始めた。

15分ほど降り続けた頃、明らかにフェス用のシャカシャカを着込んだ大衆を満載したバスが颯爽と横を通り過ぎていく。
傾斜10度を確実に超えた坂道で瘤さながらに固まったふくらはぎを感じつつ前方に目をやると、同じく何の疑いもなく道を共にしていた友人が、酸化したアルミニウムのような眼でこちらを見上げている。

明らかに過ちであったとお互い口に出せないまま滑り込んだ宿の布団は、些か冷たかった。







宿の裏にある食堂で「お客さんのことをすっかり忘れていた」と1時間近く放置された後たどり着いた2日目の会場は、昨日とは打って変わって両手を広げて走り回りたくなるほどの快晴だった。

メインステージとなるRDC Stageでは待望のハウス大明神Tornado WallaceがBPM120にも到達しないような実にトルクの高いハウスセットを披露しており、彼のリメイク版ロボコップさながらに空気抵抗の無さそうなサングラスも相まり会場の多幸感は出だしから天を衝く勢いとなっていた。



続けてYoshinori Hayashi、Wata Igarashiと立て続けにハードな地均しを試みるメインフロアで満足行くまで音を浴びた後、CYKの開始時刻となる20時に合わせRedbull Stageへと足を向けることにした。





DJ Nobu x Sandrienの真裏、Toreiが閉鎖空間に実に良く合うスペーシーなハウスセットで駆け抜けたフロアにて完全なる充電を果たした頃、20時のRedbull StageにNari、Kotsu、Naoki Takebayashi、そしてCYKへの本格復帰を遂げたDJ No Guaranteeが肩を並べていた。
このフロアにハウス・コレクティブ CYKはどのようなセットを提示するのだろうか、と一人穿ってみる。

昨年のRDCでのセットを思い出す。柔らかな黄金色の斜陽のなか、徹頭徹尾聴衆の解放をアシストしてくれた彼らのセットは、間違いなく一つの”成就”であったように思う。彼らは今日その延長線上に立つのだろうか。それとも新たな軸線を生み出すのだろうか。
幸か不幸か、聴衆は昨夜ここで一つの正解を垣間見ている。俺はまた、CYKが彼らの行いを成就するところに立ち会いたい。結局のところRDCに飛び込んだ最も根幹の理由は、その一点だった。





20時丁度、彼らの名を表すネオン管の光とともにCYKのアクトは始まった。Eddie Holman / Holy Ghost…粘度の高いディスコ・サウンドから封が切られたステージは、Things Fall Apart/ Steve Monite ~ 1981 / COEOと続き、Sofrendo E Sorrindo Saidera / SaideraからGet To My Baby / Try To Find Me と緩やかにアクセルを踏み始める。
上述のTornado Wallaceまで通して純なディスコサウンドを耳にしておらず胃が乾いていた筆者は、ついついEddie Holmanの沁み入るような声を聞いた時点で「うわぁ〜」とへなちょこ声を漏らしてしまう。




開始30分に差し掛かる頃、静かな断裂を起こすように投下されたShouts In Peace / San Soda からフロアは本格的なハウスに舵を切り始める。
Dale[Dub] / Arthur Baker と続き深化していくディープ・ハウスの潮流は、Don’t Lose The Magic / Shawn Christopher 〜 Electric Baile / Master Plan といった艶やかなディスコサウンドを挿入することで沈下と浮上を繰り返す。
3時間セットなので当然といえば当然だが、今のところ大人しい。


Somebody / Make A Dance のアシッドライクなサウンドに手を掲げる聴衆に目を配りながら、小生意気な考え事を走らせる。
昨日からRedbull Stageに立つ限り、彼らが得意とするディスコ・ハウスサウンドは……INCUBUSシステムとは明確に相性が良いとは断言できない気がする。中域が強烈な塊として飛んでくる以上、低域と上層の分離が良いトラックの方に分がありそうだ。このまま深化していくのだろうか、それとも……


いやいや詰将棋じゃないんだから、と身勝手な思索に手を打った頃、Naoki Takebayashiが投下したEarth Steps / Pee.J Andersonにて深みは一旦の頂に達する。フロア全体が硬く鳴動する中に感じるトラックの柔らかさが絶妙な匙加減で身体を包み込み、踏む足の幅が明確に広がっていくのを感じる。


穏やかに加速していく彼らのセットに身を任せているうち、気づかぬ内に各員のソロパートに移行していたようだが……顔を上げるたびフロアの中心に立つ人間が変わっている。時々起こるグルーヴの断裂がパーソナリティの移行によるものなのか、それとも彼らの均一性の上に立つものなのかわからない。わからないなら……わからなくていいだろう。音に追われるだけで精一杯となっていった21時頃、既にブースを目で追うことはしなくなっていた。




CYKが明らかに仕掛け始めたのは、DJ Nobu+Sandrienがメインステージのクロージングを終えたのち(と思われる)の21時30分頃、丁度セットの半ばに差し掛かった頃だった。
Earth Stepsの狭間に……明らかに例のアレとしか思えない音色が聴こえ始める。こ…この油断したら屁に聴こえるシンセは……




出たわね




突如としてフロアに投下される Show Me Love / Robin S、最前線で上がった歓声が……次々と後方に伝播していく。まるで怒号のように鳴り響く「やったなCYK!」と言わんばかりの声々は急速に、かつ一向に収まらず、フロア全体が脈動し始めるのを感じる。振り返るとフロア最後方、ドリンクバー付近まで聴衆が詰まり、もはや自分が今しがた立っている最前列付近は肩を揺らすのも困難になり始めていた。
クソ!こんなコテコテの……しかし、、、良い!
目の前で筆者を肘で小突き続けていた外国人兄貴もしきりに「No.1!」と何かを褒め称えている。
メインステージが閉じ、必然的に全ての聴衆を抱えることとなったCYKの「始めのご挨拶」はド直球一本勝負の実に明快なものであり、残り1時間半で彼らがもたらしてくれるであろう道程の必然性が垣間見えた。
”潜った分上昇する”ことを確信した筆者は……一服を吸いに行くことにした。



束の間の休憩を終え、もはや出入口の目前までパンパンに詰まった聴衆を掻き分けフロアの中心に戻るとフロアには Come Over Me / Stones Taro が投下されており、ハードなブレイクスの潮流がフロアの足場を急激に固め始めていた。
グライム 1234 / Mark Pritchard や彼らの盟友がコンポーズしたテック After The Rainbow / Yukio Nohara と続く中、Robin Sから垣間見えた甘美な予感と眼前に展開されるガチガチに硬い鳴動に生まれた狭間により、筆者を含む聴衆の緊張ははち切れんばかりに臨界付近を漂う。
臨界過ぎて……一服を吸いに行くことにした。



贅沢に2本連続で吸いフロアに戻ると……X-coastのMango Bayと思わしき何かが掛かっている……、、、や、やられた!!
リミックスなのかテンポアップなのかはわからないが、フロアを包み込むアンビエント・ハウス然としたトラックに易易と緊張が決壊するのを感じつつフロアの中心に飛び込む。CYKの出番は残り40分となっていた。

続けて痛快なピアノ・バッキングがけたたましい Doop Doop / S3A が投下されると、Robin Sが投げかけられた時よりも遥かに……悲鳴にも似たような歓声が鳴り響き、、、止まらない。
いつまでもいつまでも止まらない、こんなフロアは初めてで……恍惚が裏返り身体の芯が冷たくなるのを感じる。

つんざくような地鳴りの中、Move your Body / Marshal Jefferson & Solardo、Haunt / J+1、Tuco Disco / Billy Idle & Mr. Fonkと駆け抜けるようなハウスが矢継ぎ早に投下され、うねりは Da Ya I'm Sexy(ピンク・レディーの方)で最高潮を迎える。
やってくれたなCYK……アンビエント・ハウス、ディスコ・ハウス、ガラージハウス、和モノ……多幸感の尽くを怒涛の如く詰め込んだラッシュは、最終日までの全日通して最も”ありがてえ”が積み上げられた瞬間となる。
笑みを向け合うもの、手を掲げ叫ぶ者、全身で踊る者、抱き合う者、熱いチッスを交わす者……ブースから投げ渡された彼らの「集積物」が、思い思いの形で聴衆に咀嚼されていく。





先述の通り、CYKが得意とするディスコ・ハウスチューンとRedbull Stageの環境が十全にマッチしているとは断言できなかっただろう。
ひねくれた話をすれば、反響も相まって中域が一枚の板のように渾然一体となって飛びかかってくるこのフロアでは、トラックに埋め込まれた演奏の仔細を聴き取れたわけではない。
しかしながらそれは……それはまた、実に有機的な響きだったのだ。

反響に反響がぶつかりくぐもりうねるようなRedbull Stageの中で、弾けるような恍惚を撒き散らす怒涛のハウス・サウンドは……まるでブースの奥の奥、そのさらに向こうへと、聴衆が置く一歩ごとに前進を続けるチューブ型の臓物の中にいるような、極めて暴力的な悦楽だったように思う。
一枚隔てる肉壁を通すかのように、歪にさえ思える強烈な多幸感が聴衆のどでっ腹を何度も何度も貫き、脚と精神を野放図に加速させていく。
踊りも、歓声も、熱い抱擁も、ぐるりと見渡す限り収まる気配はない。意識を一瞬でも冷やせば「とんでもない場所に立っている」と走り出したくなるようなフロアを、眼前のブースに立つ4人が作り出している。

これは……どう足掻いてもうまく伝えられるものではない気がする。しかしその場に立っていたものには明らかに共通の感覚を励起させられるであろうと信じて、やはり「有機的」であったと表現することにする。



大袈裟ではなく、後半1時間でCYKが彩ったRedbull Stageは正しく彼らの「遊び場」と化していたように思えた。
Moodymannが見せつけた一夜の正解が、彼らに揺さぶりを与えたのかはわからない。が、結果として筆者を含め聴衆はCYKの掌の上で、彼らの痛快なセレクトと剽軽な音の差し引きの上で「ひどく十全に踊ることが出来たのだ」と伝えたい。CYKがアクトを終え急激にフロアが加速を止めた時、四肢がドロドロに溶けたような疲労感が一挙に立ち上ってきたのを憶えている。

深く沈下し、一瞬の溶解のあと急速に硬化し弾けた、ズルズルと前進を続けたあのフロアの……その有機的な様を今この文を記している現在も忘れることが出来ない。

邪悪なほど無邪気にフロアを受肉させたCYKの大立ち回りは、果たして彼らにとって「成就」たりえたか?

この問いは……泥のように重たいこの脚を鑑みれば、ひとまず野暮であろう、と懐にしまいこむことにした。







さて、その後筆者がどうなったのかと言えば、ロクに音楽を聞くことは出来なかった。
というのも同行していた友人が2日目のトリ、Anthony Naplesが終盤に差し掛かる頃に失踪したのである。
「酒を買ってくる」と言ったきり姿が見えたくなってしまった彼が心配なあまり、Anthonyに関しては「速めだった」くらいの印象しか持てていない有様だった。

結局友人は「光っている」という理由だけで会場から謎のバスに乗り込み、徒歩2時間ほど会場から離れた謎の土地に飛ばされてしまっていた。
蚊の鳴くような声で「訳が分からない」と寄越してきた友人の電話を頼りに「2日連続で徒歩寄宿した客は過去何人いるのだろうか……」と考えつつ、伊豆の山を駆け下りて2日目が終了したのだった。

3日目、最終日に関しても過激な結果となった。
みんな大好きKenji Takimi、札幌の至宝Kuniyuki & 国内ハウスのお父さん寺田創一 & Sauce 81、ご存知Motor City Drum Ensemble、そして妙手Antalとこれまたハウスラヴァーホイホイなラインナップだったにも関わらず、初日もかくやという豪雨に出だしから見舞われた会場でまんまと低体温症になってしまったのだ。
そのため各人に対し「優しい」「Kuniyuki」「最高だった」などとぼんやりした記憶しか持ち合わせていないため、諸々の記載は割愛する。

豪雨のなか靴を1セット失い、脚が鰹節のようになり、新品のパーカーが腐敗し、2度も高低差200mの山を駆け下りる羽目になったRDC2022であったが、苦しい状況の中にあって四方から多幸感を噴き出させ続けたこのパーティにお邪魔できたことを、心から喜びたいと思う。

Moodymann、Ron Morelli、Tornado Wallace、Anthony Naples、MCDE、Antalとのみならず、Sobriety、Monkey Timers、Yoshinori Hayashi、Wata Igarashi、Torei、Licaxxx、Kuniyukiに寺田創一……と今後またと得られるか想像もつかない驚異的な3日間をもたらしてくれたRDCに、そして伊豆に飛び込むきっかけをくれたCYKに感謝を。

来年もまた穏やかに開催が迎え入れられる情勢であることを願いつつ、〆とします。





※記載されたトラック名はヤマ勘のため、打率2割程度とご認識ください。

◯書いた人間
・Twitter:@dekkek
・Instagram:@dekkekk








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