第二話 ボーイミーツガール

[前回のあらすじ]
恋庭というマッチングアプリを始めて2つ年下の女性と会う約束をする。



さて今日は約束の日、恋庭で仲良くなった女性と会う日である。

少し早めに集合場所に着く。暑い。梅雨の晴れ間。もしかしたら相手はもう着いているのでは?と思いあたりを見回す。数人の女性がいる。アバターしか知らないので、そこらへんの女性に声をかけるわけにはいかない。

とりあえず恋庭のアプリを開ける。
『ホウレンソウが収穫できるよ!』
いつも通りの通知。相手からのメッセージはない。30秒でできるホウレンソウを収穫し続け、期待と不安でいっぱいの心を落ち着かせる。途中で色々とめんどくさくなってきて、もうアプリを消して帰り、吉野家の牛丼でも買うか、と一瞬だけ思ったが、常識的な人間なのでそんなことはしない。

5分ほど経つと『メッセージが届きました』との通知が来る。
「着きました〜」
ついに来た。立て続けにメッセージが来たが、電波が悪く開かない。あたりを見回すと、後ろ姿が明らかに美人な方が1人で、時計の下でスマホを触っている。

その子まで20m。聞いていた通り背が高い。女性は自分の背が高いのを気にする人が多いそうだが、そうは思わない。むしろ魅力的である

その子まで10m。メガネだと聞いていたが、今日はしていないようだ。やはり向こうもオシャレをして来てくれている。後ろからピアスが光っている。帰らなくて良かった。

その子まで5m。いきなり後ろから声をかけたらびっくりするよな。ちょっと横から近づくか。と思った矢先、スタスタとその女性がどこかへ歩いていく。

あ、あれ?この人じゃなかったのか?と思い、再び恋庭を開く。『メッセージが届きました』と出ている。通信状態が悪いため、まだ内容が分からない。

後ろを振り向くと、ふくよかな女性が歩いてくる。いや、おそらく違う。アバターでは美人でスタイルも良く、綾瀬は◯かに似ていると言われていたそう。彼女が私の前を通り過ぎようとする。どこだ?どこにいるんだ?とりあえずホウレンソウでも収穫するか。

「デキオさんですか?」

彼女は残像が見えるほどの早さでクルッと振り返り、質問してきた。メガネ、身長、確かに聞いていた通り。誠実で真面目そう。ただ、綾◯はるかではない。ハリセンボンの近藤◯菜の身長を170cmにしたよう。最初に人違いしそうになっていた女性はいなくなっていた。

見た目は関係ない。見た目は関係ない。大切なのは中身。大切なのは中身。心の中で唱え続ける。ガッカリするんじゃない。そもそも見た目は気にしないって言ってたじゃないか。もう一人の自分と殴り合いのケンカになりそうになりながら言葉をしぼりだした。

「初めましてデキオです」

続く

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