見出し画像

神経集中治療を要する患者に気管切開をいつ行うか

上記表題で悩まれている医師、医療チームは多いのではないでしょうか?
神経集中治療を行う患者ではさまざまな理由から抜管困難になる方が存在します。
挿管適応であるA(airway)B(breathing)C(circulation)D(disfunction of CNS)が改善すれば抜管できますが、神経集中治療領域においては、このABCDの完全な改善が難しい患者が多いです。
意識レベルが悪く、舌根沈下を起こすレベルではなくとも、嚥下機能低下から抜管後肺炎を起こして再挿管になったり、廃用が進行して排痰不良で肺炎になったりと
長期化して結局気管切開になる方が必ずいらっしゃると思います。
ABCDの内2つ以上の異常があると抜管失敗に終わり、再挿管となる可能性が高いですが、少なくとも急性期はほとんどの方がこれに当てはまってしまうのではないでしょうか?
しかし、みなさん経験した事ががあると思いますが、特に脳外科疾患の患者では、幸いなことに、当初想定されたよりも意識レベルの改善が見られ1週間から2週間後に問題無く抜管に向かえる様になる方も一定数いらっしゃいます。
この見極めが難しく、どのタイミングで気管切開に移行すべきか、悩むことになるのではないでしょうか。

当院ではある程度客観的な指標で評価して、ご家族や本人にも納得して気管切開が受けていただけるように、SET scoreというものを利用しております。
SET score10点以上では2週間以上の挿管管理になる可能性が高いとされます。よって、このスコアリングで点数が高ければ、気管切開に移行するという方針をとっております。
急性期は症状が変動するので、ある程度変化が落ち着きプラトーに達したところでSET scoreを評価して主治医やチームで共有し気管切開を提案していきます。
それ以外にも併存疾患の状態(心疾患や腎機能、感染症等)を加味して総合的に判断し、その患者にとってどのタイミングで気管切開すべきか検討します。


集中治療領域の機動評価は困難であり、どうすれば良いか悩んでいる方も多いとおもます。
意思疎通ができれば、開口や挺舌ができるかどうかを確認すれば、舌根沈下リスクは除外できますが、意識の悪い患者では困難です。
嚥下機能の評価に関しては、挿管中でも嚥下運動の観察は容易です。正常であれば、しばらく観察していれば甲状軟骨の運動が観察されるはずです。それ以外にも、口から唾液が溢れてくる様な所見が無ければ、しっかりと嚥下できている証拠です(気管内に垂れ込んでいなければ)。逆に常時口腔内を吸引しないといけない患者では抜管後の誤嚥リスクは最高レベルと思った方が良いでしょう。
排痰能力も神経集中治療領域の患者では非常に重要です。当院では咳嗽痔の呼気フローで60L/分以下では高リスクとして管理しています。
レントゲンやCTを撮影するなら誤嚥による肺炎像や気管内の唾液貯留が無いかにも注意してみましょう。

以下に実際のSET scoreの表を示します。ぜひ参考にしてみてください。

ここから先は

0字 / 1ファイル

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?