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小さな駅と海~新聞より

朝日新聞。1月8日 土曜日。
 
夕刊を広げたら、ハッとするほどの、海から昇る朝日の写真が目に入りました。
鮮やかで、不思議な朝日です。

 どこだろうと見てみたら、私、ここに行ったことがありました。

 息子のところに行った帰り、電車に乗ろうと駅に行くと、
ある一人の高齢の女性が歩いてきました。

 近所の人らしく、電車に乗るのではなさそうでした。
散歩に出てきた、そんな感じでした。

「さっきの人は弟さん?」と聞かれたので、
「いえいえ、息子です」と答えました。

 電車が来るまで、少し時間がありました。
そのまま私たちは駅の待合室のベンチに腰かけました。


その駅はとても小さくて、
ドアもなく、
ベンチから青い海が見えました。
他には誰もいません。

少し風が吹いています。

 そのお年寄りは、聞かれるともなく、自分のことを話し始めました。
夫と暮らしていること。
その昔、自動車の免許を取ったけど、
運転するのを家族に反対されて、
でも、兄が熱心に説得してくれたこと。

 この辺りは飛行機が飛ぶのが見えたこと。

 運転免許を取ったというところを
何回も何回も繰り返し話をされました。

 毎日着ていると思われるエプロンをして 
足はサンダルを履いていて
足の爪は伸びていて、
あまりきれいに洗えているとは言えなかったです。

お年寄りですものね。

 「免許取ったのって、すごいですね」
  私たちは楽しく話をしました。

 やがて電車が来て、
さようならと言って、私は電車に乗りました。
その人は見送ってくれました。


 それだけのことなのですが、
後から「あの時間は何だったのだろう」と思うのです。

 実際にあったことだったのだろうか。
あのお年寄りは誰だったのだろうか。
夢ではなかったか。

そんな気がするのです。

 
 そんな気持ちになったのは、
あの駅と海のせいかもわかりません。

 小さくて海の見える駅。

 ゆっくりと気持ちの落ち着く時間が流れていました。
とても心地よい時間でした。

 私の心にいつまでも爽やかな風が吹いています。

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