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写真に表われるもの~テレビ番組から

NNNドキュメントを録画予約している。リアルタイムは夜遅いので、昼間、時間のあるときに見ている。

先週2月26日(日)は「釜ヶ崎の肖像」~明日への3000枚

日雇い労働者の街、大阪・釜ヶ崎。その公園に、年末とお盆の年2回だけ、無料の写真小屋ができる。名前は「釜の写真館」

引退したカメラマンさんがボランティアでやっている。証明写真や、望む人の写真を撮り、無料で渡す。

撮ってもらう人は、思い思いに自分を表現する。カメラマンに応じてポーズする。みな、嬉しそうである。「年取ったら、写真は財産よ」
カメラマンは、「力強く生きている証が表現されたら良い」と言う。

小屋(写真館)の中は、今までに写した写真で埋め尽くされている。全部白黒だ。

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あいりん地区の生活保護率は40%。写真館にやってくるのは、3畳一間の福祉アパートで暮らす人、子どもや家族はいるが別れて暮らさざるを得ない人、お酒を手放せない人、病気で働けなくなって生活保護の人など。みんなそれぞれに深い事情を抱えている。

でも、登場するどの人にも魅力があり、愛すべき人々なのだ。過去を抱えて今を頑張って生きている。そんな感じがする。

「グッドモーニング、ハロー、エブリバディ!」と陽気に英語で挨拶する男性。家賃を滞納して追い出され、大好きなギターも手放した。でも、明るい。

亡くなった彼女のことを、いつまでも思う男性。「自分が手を上げたから」「可哀想なことをした」その思いとともに生きている。死んだ猫のことも忘れられない。やさしい。

遠くで暮らす息子がいる男性。
「父親らしいことは何もしていないけど、こんな親父がおったんやということを残したい」
息子を思い、「自分は父親である」という気持ちが少しせつない。

みんな、世の中を恨んだりしない。さまざまな経験をし、年を重ね、自分の境遇も受け入れている。そんな感じがした。
「満足?しとる、しとる」
「なりゆき、なりゆき、明日のことはわからない」
「何が大事か。生きることが大事や」

「40年前のことを考えてもしゃーないんだけどな」

小さい頃に出ていった父親を、「覚えていないから、恨みようがない」
昔の家族の写真を大事に持っている人もいる。


白黒写真は、人の心情と生きざまを感じとるとカメラマンは言う。どの写真も、見ていて感情が動かされる。「ああ、いい表情しているなあ」と思う。
生きてきた証が刻まれている。本当にそんな気がした。

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この公園に来れば、誰かに会える。

ナレーションで「人が生きていくのに必要なのは繋がり」と言っていた。
写真館の中の写真に、自分のを見つけて涙ぐむ男性。展示されていたことが嬉しいのだ。

3畳の部屋で、誰も知らないうちに亡くなった男性。一ヶ月前に撮られた最後の写真が、本人の希望通りお盆の慰霊祭に飾られた。みんなの集う公園に。
一人ではなかった。        


1970年代の高度成長期のあいりん地区、バブルはじけた時代、と変遷にも触れている。身寄りのない納骨堂を世話してくれている教会の神父さんは「生きているうちに、福祉につないだり、生活の段取りができていたら・・・」「(亡くなった人に)ごめんね、という感じ」と言う。

きれい事ばかりではない。

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*ヘッダーお借りしました写真の持つ力。写真が写すもの。そんなことを考えました。

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