第7回 「メタバース」PJインタビュー(前編) ~ 仮想空間から関係人口増加を狙う
鎖国当時、日本唯一の玄関口として開かれていた出島には、中国やオランダから異文化が持ち込まれ、結果として長崎は、和(日本)・華(中国)・蘭(阿蘭陀)という異質な文化が溶けあう地となった。長崎のごった煮のような文化様式は「和・華・蘭」(わからん)と呼ばれるが、他の地域から見たら、まさに「訳分からん」文化なのは間違いない。
自治体が抱える地域課題を企業のテクノロジーで解決していくワークショップ「デジマ式Plus」でも、地域課題の内容や参加者の顔ぶれによって、思いもよらないシナジーが生まれ、当初の予定を超える着地点を迎えることがある。
今回ご紹介する「第6回目のデジマ式Plus」では、まさしく意外な着地を迎えたケースと言えるだろう。それほどまでに、地域の課題解決策としてメタバースが浮かび上がってきた紆余曲折のストーリーは、「デジマ式Plus」ならではと言えるだろう。
そうだ「デジマ式Plus」に行こう!
第6回目の「デジマ式Plus」を開催するにあたり、参加企業のひとつである株式会社シーエーシー(以下、CAC)では自社内で参加者を募っていた。
「長崎市と雲仙市が課題を出すアイデアソンを東京でやるので参加者は誰かいませんか?」
その社内公募に名乗りを挙げたのが、CACの新規事業開発本部へ異動してきたばかりの平山 智隆氏である。以前より仕事で長崎市・雲仙市を何度も訪れ、その土地柄に親しみを抱いていた平山氏は長崎の地域課題解決のお手伝いができれば、と考えた。
そして2人の同僚と共に「デジマ式Plus」に参加する。(デジマ式Plusの一連の流れは下記の記事をご参照ください)
ワークショップ冒頭で長崎市・雲仙市が提示した地域課題は「コロナ禍で加速する新しい働き方を企業向けに定着させ、地方への関係人口流入を増加するためには何ができるか」というものだった。
ちなみにこのお題は事前には知らされていない。どの参加企業もその場でお題を知り、その場で解決策を捻り出すのである。そのスタイルについて、「デジマ式Plus」をCTCと共同運営するイー・エージェンシーの甲斐 大樹氏は次のように語る。
「デジマ式Plus」から出たアイデアが形になるまで
「地方への関係人口を増加させる」ためには、どうしたらいいのか?関係人口が増やすためには現地に行く人を増やさなくてはならない。しかし現地を訪れるのは仕事や観光などの目的を持っている人がほとんどで、何の目的もない人がふらっと現地を訪れることはない。
そこで、現地とは関係性が薄い人に対して、オンラインでの接点を増やし、現地のことを知ってもらい、好きになってもらうことから始めよう、と平山氏のチームは結論を出した。
ちなみに「デジマ式Plus」は地域課題に対し、各企業は最後に解決案を披露するが、その案に対して、地域課題を持ち込んだ地方自治体がその場でジャッジを下さない。
その解決案はそれぞれ自社に持ち帰り、そこから地方自治体や「デジマ式Plus」運営とやり取りをしながらブラッシュアップしていくが、やり取りを繰り返している内に、全く別物のプロジェクトになっていくことも多い。
「タッチポイントを増やすというところで何ができるかを宿題として持ち帰った感じです」と平山氏。そしてアイデアを練る中で、平山氏はメタバースという新しい技術に着目する。視覚的に認識し、そこに行けば誰かに会えるという疑似的な空間が、現地に実際に出かける前段階の体験として有効ではないかと考えたのだ。
そして暗礁に乗り上げるアイデア
しかし当時、メタバースはまだ一般的ではなく、平山氏自身を含め社内に知見がある人材がいなかった。メタバースを実装するプラットフォームを選び、そこに仮想空間を構築するといった実作業が必要になってくるが、それをできる人がいない、という暗礁に乗り上げてしまったのだ。
そんな途方に暮れる平山氏の前に救いの手を差し伸べる人物が現れる。その奇跡的な出会いも「デジマ式Plus」の妙とも言うべき出来事だが、これについては次回で述べていこう。(後編に続く)
「デジマ式 plus」ご興味のある新規事業担当者さまへ
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