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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#小説

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』を読む。 不死の身体を手に入れた「わたし」が、ひとり…

既視の海
1か月前
20

四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人…

既視の海
4か月前
19

アゴタ・クリストフ『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』

『悪童日記』三部作を読み、著者アゴタ・クリストフが、母語ではないフランス語で書くことの意…

既視の海
7か月前
25

アゴタ・クリストフ『悪童日記』

読む本は、いつもゆくりなし。 先日来、「いま読書中」「一番の偏愛本かもしれない」という声…

既視の海
7か月前
18

ロベルト・アンプエロ『ネルーダ事件』

「ネルーダ週間」も終盤にさしかかる。映画を観たり、詩集を読んだりしながら、参考文献を紐解…

既視の海
7か月前
12

小説・辻邦生、銅版画・山本容子『花のレクイエム』を読む。毎月一つの花を主題にした文学と銅版画の交歓。死が分かつ切なさを書いた短篇が多い一方で、銅版画は抑えられた色彩でも華やかさがにじむ。打ち合わせなしで臨むがゆえ起こる共鳴とずれのいずれも心地よい。お気に入りは五月のクレマチス。

既視の海
8か月前
10

アントワーヌ・ローラン『ミッテランの帽子』を読む。さえない会計係、不倫中の作家の卵、スランプの調香師、時代遅れの資産家が次々と仏大統領の帽子を手にして運命を変えていく。洒脱な筆運びと固有名詞、歴史的事実で具体、具体とたたみかける。登場人物も読み手もみな幸せな気分になれるのがいい。

クラリッセ・リスペクトル『星の時』

またひとつ、静かな物語。 クラリッセ・リスペクトル『星の時』を読む。 舞台はブラジル・リ…

既視の海
7か月前
29

ジュンパ・ラヒリ『わたしのいるところ』中嶋浩郎訳

そう、こんな本が読みたかったんだ。 自分の好みを明文化しているわけでもないのに、そう思う…

既視の海
8か月前
24

ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』

ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』を読む。 調べると、2010年以来の再読。偏愛作品…

既視の海
9か月前
30

梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』を読む。『家守綺譚』『冬虫夏草』の綿貫や高堂の朋友・村田が留学した土耳古(トルコ)の滞在記。ディミィトリスと訪れた古代大城壁の場面がいい。下宿先の鸚鵡もいい味を出してる。It' s enough! 終盤のディクソン夫人の手紙に胸を締めつけられる。

既視の海
1年前
13

グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』【書評】

グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』を読む。 グレイス・ペイリーが生涯で3冊しか…

既視の海
1年前
17

柴門ふみ『花の名前 向田邦子漫画館』を再読。柴門ふみが学生時代からの憧れを漫画にしたとき、向田邦子はすでに亡かった。小説やドラマとは違う物語の解釈や造形に私淑の深さを感じる。「思い出トランプ」収録の名作『かわうそ』も、厚子のくりくりっとした目と愛嬌が、漫画なのに向田邦子に重なる。

既視の海
1年前
9

ポール・ハーディング『ティンカーズ 』を読む。病膏肓の時計職人が死の8日前から思い出すのは、自分を捨てた癲癇もちの父、心を病んだ牧師の祖父。幻覚の中で三人それぞれの人生が交差する。古き良きニューイングランドが味わい深い。一人の人生に絞り、じっくり描いてあればもっと良かったのに。