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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#読書好きな人と繋がりたい

小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささやきよ!』

Webちくまに連載していたときから楽しんでいた小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささや…

既視の海
12日前
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オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空 戦争の中のウクライナ人』

2022年2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻から2年。いまさらながら今春、ウクライナからの…

既視の海
2週間前
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早川義夫『海の見える風景』

「一年前、妻が癌になって初めて、そばにいてやりたいと思いました。しい子は3月28日に亡くな…

既視の海
2か月前
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アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』

アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』を読み終える。も…

既視の海
2か月前
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四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人…

既視の海
4か月前
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アゴタ・クリストフ『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』

『悪童日記』三部作を読み、著者アゴタ・クリストフが、母語ではないフランス語で書くことの意…

既視の海
7か月前
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アゴタ・クリストフ『第三の嘘』

少し感傷的になりながら、アゴタ・クリストフ『第三の嘘』を読む。『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く三部作の完結編である。 アゴタ・クリストフの母国であるハンガリーを思わせる国のはずれが舞台となり、第二次世界大戦の戦火を双子の少年たちが生き抜いた『悪童日記』。その双子の一人が成長した青年リュカが、亡き母親に似た女性を慕いつつ、血のつながらない不具の少年に情愛をかける『ふたりの証拠』。 そして、ベルリンの壁が崩壊し、西側と東側で行き来ができるようになった時代を思わせる『第三の嘘

アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』

いてもたってもいられず、アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』を読む。『悪童日記』の続編であ…

既視の海
7か月前
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アゴタ・クリストフ『悪童日記』

読む本は、いつもゆくりなし。 先日来、「いま読書中」「一番の偏愛本かもしれない」という声…

既視の海
7か月前
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ロベルト・アンプエロ『ネルーダ事件』

「ネルーダ週間」も終盤にさしかかる。映画を観たり、詩集を読んだりしながら、参考文献を紐解…

既視の海
7か月前
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小説・辻邦生、銅版画・山本容子『花のレクイエム』を読む。毎月一つの花を主題にした文学と銅版画の交歓。死が分かつ切なさを書いた短篇が多い一方で、銅版画は抑えられた色彩でも華やかさがにじむ。打ち合わせなしで臨むがゆえ起こる共鳴とずれのいずれも心地よい。お気に入りは五月のクレマチス。

既視の海
8か月前
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エステルハージ・ペーテル『女がいる』

女がいる。僕を愛している。かつてはそうつぶやいたが、いまでは分からない。彼女は僕に、消え…

既視の海
8か月前
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ジュンパ・ラヒリ『思い出すこと』中嶋浩郎訳

見えてはいるが、誰も見ていないものを見えるようにするのが、詩だ。 詩人・長田弘のこの言葉…

既視の海
8か月前
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ジュンパ・ラヒリ『わたしのいるところ』中嶋浩郎訳

そう、こんな本が読みたかったんだ。 自分の好みを明文化しているわけでもないのに、そう思うことがある。このジュンパ・ラヒリ『わたしのいるところ』がそうだった。イタリア語への思慕があふれ、40代になってから移住し、母語ではなくイタリア語で執筆を始めたジュンパ・ラヒリの長編第1作。日本語に翻訳されたものしか読めないから、その進歩のほどは判断できない。でも、訳者あとがきによれば、ほぼ完璧なイタリア語で書かれているという。 登場するのは、大学講師をしている45歳の女性「わたし」。お