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ひとりの本好きが、本好きの友だちと交わす往復書簡。

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読んだ本について手紙を書く。本好きから本好きへと書く手紙。往復書簡。手書きの必要はありません。ここから始まった往復書簡がいくつもあります。あなたの手紙、待っています。
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#向田邦子

何が「書くこと」に駆り立てるのか——石村博子『ピㇼカ チカッポ 知里幸恵と「アイヌ…

拝啓 いまだ出梅の知らせもないままに、炎威ばかり厳しさを増します。御身体はかわりありませ…

既視の海
11か月前
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書かれた言葉ほど、書いた人の不在を感じるものはない——ダヴィド・フェンキノス『シ…

拝啓 半夏生に大雨はつきものですが、災害の報に胸が痛みます。あなたが暮らす地方はいかがで…

既視の海
1年前
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「思い出す」のは過去ではなく、現在——有吉佐和子『悪女について』、宮本輝『幻の光…

拝啓 ついに入梅かという湿っぽい気持ちを隠せない一方、静かな雨音をききながら読書するのを…

既視の海
1年前
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あの人だったら、どう行動するか——フォレスト・カーター『リトル・トリー』、向田邦…

拝啓 台風一過の青空も束の間、少しずつ灰色が混ざってきました。やはり梅雨が来てしまいます…

既視の海
1年前
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語り得ない言葉を、読む——梨木香歩『家守綺譚』、山本昌代『応為坦坦録』

拝啓 葉のうえにそそぐのが霖雨ではなく沛雨であることにため息がこぼれます。折節の移ろいは…

既視の海
1年前
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同じ書物を読む人は遠くにいることを知る——岡崎京子「万事快調」、向田邦子「胡桃の…

拝啓 向暑のころとは思えない朝夕の気温差と、1日ごとの寒暖差です。それでも我が家の庭では…

既視の海
1年前
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「お」の抽斗をつくりたい

拝啓 この冬で一番の寒気が近づいているなかで、あなたの言葉一つひとつが胸をじんわりと暖めてくれました。ありがとうございます。 あなたが触れていた向田邦子は、「う」と書かれた抽斗を持っていたそうです。「う」は、うまいものの略。送ってもらって、もう一度食べてみたいと思った地方の名産品や、耳にした評判のよい御飯処。作ってみたい料理のレシピ。自他ともに認める悪筆、乱筆の向田邦子ですが、それらの「うまいもの」メモやリストは、あとあとまで読める字で書き、その抽斗にしまっておいたという