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クラウド

クリック一つで買い物ができる
初対面でも、共通の趣味を楽しめる。
外出しなくても、料理を届けてくれる。
個人情報を入力せずに、コミュニティに入れる。
若者に負けるかと、変なダンスを世界に披露できる。

怪しい集団が、「オレオレ詐欺」で、進化に遅れた老人を食い物にした。
善良たる企業が、老眼には見えず、現役世代には見る暇のない長い約款を
「次へ進む」でパスさせて罠にはめ、骨までしゃぶりつくす。

パスワードは随時更新を求められ、1人につき、3つも5つもあり、
加入した覚えのない会社から、知らず知らずに金を引き落とされる。
それに気づき解約を試みると、契約時の数十倍の難関を越えねばならない。

日曜の夜のドラマでは社会の歪みを「倍返し」してそのはけ口となり、
翌日からの仕事や社会活動に「参戦」する気力を奮い立たせる。


当然のように乗っていた満員電車が、コロナで閑散とし、
小さなお山で席を奪い合う、嫌みな上司や手厳しい女子に会うことも減る。

心に空白ができると、他人事のようにわが身を振り返る。

何のために競い、争ってきたか。
進化に遅れるものを食い物にしてきたか。
抱えたストレスの「倍返し」を夢見てきたか。

週末に見た富士山の山頂は、きれいな白い雲に覆われていた。
我らの社会は、重苦しい闇のようなクラウド(雲)に覆われている。

人と、社会との距離をとり「密」を避けると見えてきた。

富士山のふもとっぱらでは共生する生物たちが、
クラウドの下で感染した、我ら重篤患者たちを怪訝そうに見ていた。

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