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大人の「現代文」35……『舞姫』知識人の自我の目覚めと挫折?

ホントのテーマは何?

 さて私の手元に第一学習社の「国語便覧」というものがあります。この「便覧」は高校生が国語の学習の際、必要とする参考資料をひとまとめにしたもので、現代文から古文・漢文まで、コンパクトに必要事項をまとめたとても便利なものです。現代文の文学史などにとくによく利用されます。覚えておられる方も多いのではないですか?
 その便覧の『舞姫』にはこう書かれています。
 
『舞姫』は鷗外の文学的処女作ともいうべき作品。近代知識人の自我の目覚めと挫折とを、鷗外自身の青春に重ねながら描いた名作。某省からベルリンヘ派遣された主人公太田豊太郞は、踊り子エリスを知り、愛し合うようになるが、二人の愛は、豊太郞の免職、そして帰国という事態の中で破局を迎える。

 これは、とくに変わった解説ではありません。ごく普通の解説でしょう。確かに、豊太郞の「自我の目覚めと挫折」が書かれています。そしてこの「挫折」こそ「わかった、エリスと別れる」の一言、原文で言えば

 「しばらく友の言に従ひて、この情縁を断たんと約しき」
 
 が淵源になるのですが、これについての解説は書いてはないのです。でも、敏感な生徒なら考えますよね?
 
 ふーん。明治のインテリは、こんなふうだったのか?でもなんで?なんで挫折したの?「自我の目覚め」の「挫折」って何なの?

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