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今年の上半期に観た映画

 観た映画と読んだ本のタイトルをメモに取っている。十五年分くらいはあるが、きちんと振り返ったことは無かった。せっかくなので、今年上半期に観た映画のタイトルと、ひとことメモを記しておこうと思う。

2024年1~6月に観た映画本数 37本
 
●アステロイドシティ
ウェス・アンダーソンの映画はできるだけ観るようにしている。
テンポの良さ、オシャレさ、色々学ぶところが多い。真似できるかどうかは別として。しかし彼の映画はいつも私のような不勉強なものには難しすぎる部分が何箇所もあり、毎回、全て理解した!とはならないのが残念。
 
●恋人たちの時刻
小樽在住の友人が「この映画がきっかけで小樽の大学に入り今でも住んでいる」とまで言うので観てみた。
1987年という時代の「らしさ」をヒシヒシと感じる。なんというか、明るさと暗さ、自由さと不自由さのバランス?なのかな。
海猫屋、舞踏、おたる水族館、路地の錆びれた感じの家家。小樽の魅力随所にあり。
筋書きは主人公にとって都合良すぎの感もあるが、脚本は荒井晴彦なのか。
しかしヒロインのキャラは魅力的だし、主人公のダメさもかえって味になっていて、良い青春映画として観れた。
 
●インタビューウィズバンパイヤ
50代女性二人が遊びにきた時に二人とも好きな映画と言ってたので、観てみたが、こういう耽美風の感じは苦手かもしれない。
あとラストの「悪魔を憐れむ歌」が良いと二人とも言ってたからそれを期待してたのに、ストーンズじゃない誰かのカバーなのか!これは残念。
 
●マル秘色情めす市場
最高に良かった。芹明香のけだるい喋りかたと骨と皮みたいな身体、ひらひらしたワンピース、ムシムシと暑そうな大阪の空気。こういう仕事の女の人ってちょっと神様みたいだな。神様をよく知らないけれども。
私の敬愛する荒木一郎さんが発掘した「伝説の」ピンク女優、芹明香の凄みを堪能できた。
 
●やさぐれ姐御肌 総括リンチ
敬愛する映画評論家が「この映画が石井輝男のエログロ路線の中では一番良い」とおっしゃっていた。そして荒木一郎さんが社長をしていた「現代企画」所属だった頃の池玲子をじっくり観たかった。
馬鹿馬鹿しいけど清々しさもあり。池玲子はビジュアルも良いし演技もちゃんとできて、ピンク女優の中でも格上!という感じがした。
エログロ路線としては確かにライトだった。
 
●女王陛下のお気に入り
ヨルゴス・ランティモス監督の新作が話題となっているが観にいけないので、同じ監督・女優コンビでまだ観てなかったこれを観た。
意地悪で不穏で、いやなところを突いてくるけどセンスが良くて、いやだけど面白かった。アン女王役が凄まじかった。
 
●飼育
三國連太郎って観るたびに違う役になっていてすごい。でもだから記憶に残りにくくて、今まで意識してなかったな。
これは原作では少年目線のもっとぼんやりしたラストだったはず。映画では大人目線でかなりエグいところまで。
大島渚は日本の嫌な部分を描くのが上手すぎる。観終わったらヘトヘトになっていた。
 
●燃えつきた地図
これは著者安倍公房本人が脚本を書いただけに、原作をそのままやっていたようだ。あとで小説をパラパラと読みかえしたら、セリフまでそのままな部分がたくさんあった。
しかし主演は勝新太郎じゃないほうがよかったんじゃないかな。勝新じゃ心が強そうすぎるもの。田宮二郎だったら、どうかしら。想像したらすごく良くてうれしくなった。
勅使河原監督らしさ、美意識とか、そういう感じが弱かったのも残念。
 
●龍馬暗殺
原田芳雄は何をやっても同じになっちゃうけど、かっこいいからよし。
桃井かおりは荒木一郎にプロデュースされる直前かな。ちょっとした仕草も輝いていた。石橋蓮司も良い役者だ。役者がいいと画面が引き締まり、観ていて心地よい。
個人的にはこの映画を観ているときに初めての痛風発作が出ていて足がとても痛かったので、いつまでも龍馬と痛風がセットで思い出されることになりそうだ。
 
●ソフィーの選択
名作とされているけど、どうなんだろう。辛かった。
私は心がヨワヨワだから、こんなに辛い目に遭った人を観るのは嫌だな。こんなにひどいの?ナチスって!人間って!こんなに?ホントに?という気持ちになった。
でもイカれた男の振る舞いは最高に素敵でかっこよくて、何度かジーンとしたし、引き込まれた。
 
●にっぽん泥棒物語
最近注目するようになった三國連太郎、その魅力が爆発していた。
三國連太郎が上手いので、この主人公の実在感がすごくて(本当に実在の人をモデルにしているらしいが)感情移入できちゃう。
だからラストはもう心から応援しちゃうので、劇中の奥さんと同じ気持ちになっちゃう、それで感動してしまう。
出だしはコメディ、中盤シリアス、ラスト人情、雰囲気がコロコロ変わるのが面白い。映画の醍醐味が詰まっていた。傑作!
 
●ビューティフルドリーマー
一人でお留守番の時に観た。この繰り返し感、一人で観るのに最適だった。
昔々観た記憶があるが、今になってみて理解深まった部分がある。
ラムの願いがこの事態を招いた、というこの筋立て、なんとなく自分の人生に重なるような。そういうことあるよね、って私は思う。
 
●この世界の片隅に
友人K君が私に薦めてくれたので観たが、全然よくなくて、がっかりした。
薦めてくれたのはこっちじゃなくて増補版と言えるようなロングバージョンの方だったことが後でわかったが、増補版を観なおす気になれない。
憲兵そんな甘くないだろ、原爆そんな軽く描くな、当時の戦争孤児こんなもんじゃないだろ、と色々イライラしてしまった。
自分は母が戦争孤児みたいなものだったから色々聞かされていたし、原爆のことは、ゲンほどにエグく描くことはないかもしれないけれど、こんなに綺麗な感じにあっさり描くのはさすがに無いんじゃないかなと思った。
原爆絡みの話となると、予め覚悟をきめて観る、という習慣が昔からあったが、もうそういう感じじゃないのかな。
 
●利休
山下澄人が山崎努と対談をした文芸誌を読んで、秀吉を演る山崎努を観たくなったのと、このところ気にしている三國連太郎が利休役というのと、勅使河原宏監督だし、ということで観た。
さすが勅使河原という映像美。秀吉が「活け花」しちゃうし。審美眼という「漠然としているけど正解は確かにある」というものを描くのは難しかったと思う。観る側も試されるようなところがあったが、利休の心情は多くの人が理解できるように描かれていたと思う。
 
●一条さゆり濡れた浴情
一条さゆりの舞台を観ることができる貴重な映画ということで。
ストリップって変な文化だなあと感心。そして一条さゆりというより伊佐山ひろ子の映画だったのも意外だった。
伊佐山ひろ子は、荒木一郎と共演した「白い指の戯れ」でもチンチクリンでヘンテコリンな存在感がよかったが、この映画ではそれに拍車がかかっていた。
 
●津軽じょんがら節
最初にラストシーンが来て、回想に入る、という作りだが、その必要はあったのかな。どうなるかわからないようにしたほうが良かったような。
盲目役の女優も、チンピラな相手役の俳優も、全然知らない人なので何だか実在する人みたいに思えたのはよかった。
「約束」の監督だし、「約束」と同じキャスト(ショーケンと岸惠子)だったらもっと良かったのかもしれないという気もした。
寺田農って若い頃かっこよかったんだな。
東北のこういう「土地の呪い」みたいな感じ、札幌近郊に生きてきた私には本当の意味で理解するのは難しいかもしれない。
 
●地の群れ
ネズミのシーンはかわいそうで目をつむっちゃった。映画のために動物殺すのは嫌いだな、ユルイと言われても、嫌いなものは嫌いだ!
映画はすごく良かった。差別される側同士が、差別しあって、憎しみ合う、嫌な世界。投石されるシーンとか、ひどくて。
現実ってこんなにひどいものなのかな。人間って怖いな、と本当に思った。
少年が駆け抜ける団地のシーン、すごくよかった。幸せそうな妊婦たち。すぐ隣にある不幸な人たちの存在が、彼女たちにはまるで関係が無い、という構図の怖さ。本当の残酷さ。
 
●白い巨塔
田宮二郎っていい役者だな。あと田村高廣は「兵隊やくざ」観てから好きになったのだが、キリッと芯が通ったいい役者だと思う。二人とも適役。
しかし自分の父がここで描かれた職業そのものだったから、これってどれくらいリアルなのかな、とちょっと思ってしまった。奇しくもこれを観た日のあたりに父は硬膜外血腫で倒れ、一時は要介護5にまでなってしまったのだった。
後日手術したらすぐに治って、今では歩いたり食べたりできるようになったのにはびっくり。医学ってすごいね!
 
●黒い画集 あるサラリーマンの証言
浮気がバレたくないから嘘ついて、それが他人の運命に関わって…。
全編、何もここまでしなくとも感が強かった。
小林桂樹がなんでモテるの、という疑問が。
これはちょっと、火曜サスペンス劇場くらいの内容だったように思った。
 
●仁義の墓場
「映画秘宝」でカルト映画にピックアップされていたのを二十年以上前にみて以来、ずっと観たいと思っていた。やはり最高だった。
渡哲也がイカれてる役って意外とレアかも。「鉄砲玉」渡瀬恒彦のほうが合っていたような気もするが。
こんなにヤバい人が実在したとは。ヤクザなのに仁義を大事にしない、どんなワルでもさすがに「えー」って引くようなことばかりしでかす。
この反省しない感、突き抜け感が、ラストに至ってなぜか胸のすくようなカタルシスに。深作欣二の演出はやっぱり面白いな。
予測不可能、ヤクザ史上最強キャラ。田中邦衛もいいキャラだった。
芹明香がドヤのヤク中役で出てて、画面の迫力すごかった!
 
●女の中にいる他人
成瀬巳喜男なんだが、ぽくないというか。これもまた、火曜サスペンス劇場的な映画だった。
また小林桂樹がなんでモテるの、という疑問が再燃。新珠三千代は冷たく燃える感じ似合う。新珠三千代と夫婦役といえば「江分利満氏」のほうがずっと好きだったな。

●四畳半襖の裏張り
ピンク映画の名作とされているが、やたら長い行為のシーンあり、飽きてしまう。ピンク映画なんだから仕方ないのか。宮下順子好きなら嬉しいのかな。
終わり方が斬新というかあまりにも唐突。原作も同様にブチっと終わるらしいが。これ最初に観た人たちにとっては面白い演出だったんだろうな。
 
●恐山の女
めげない、前向き、だけど不穏、というヒロイン像が新鮮ではあった。
次々と起こる理不尽すぎる不幸。そのあまりの連続性に滑稽さを感じてしまい、最後の方は爆笑しながら観ていた。
殿山泰司の「親代わりみたいなものだし」というセリフとか、ひどいんだけどジンワリ面白く。
東野英治郎のうさんくさい霊媒師も最高にうさんくさくてよかった。昭和の俳優はいいなあ。
 
●儀式
冠婚葬祭でしか会うことがない「親戚」という独特の関係。
日本の家族、親族というものの嫌な部分を煮詰めてドロドロにしたような内容。大島渚のこういう徹底的に日本を貶める感じ、すごいんだけど観ていて辛くなる。
野球のシーンよかった。土に耳をつけるとことかも切なくてよかった。
主演の河原崎建三、荒木一郎が降板した「愛奴」の主役にもなった人だけど、「愛奴」も「儀式」も、主演が荒木一郎だったら、めちゃくちゃ良かっただろうに!と思う!
 
●天使の恍惚
山下洋輔トリオが音楽・出演もしているというだけの理由で観てみたかったのだが、面白かった。
若松孝二らしさ、低予算の中でそれらしくみせる演出、やっぱりすごいなあと思う。音楽もよかったし、かっこよかった。
 
●はなれ瞽女おりん
岩下志麻はうまいなあ。そして画面がいちいち綺麗だった。
「網走番外地」の悪い人は、途中までいい人に見えてもやっぱり悪い人で安心感あるな。出てるとなんか嬉しい役者の一人だ。
原田芳雄との出会いのシーンとか、荷車のとことか、こういうシーンってずっと心に残っちゃうよね。良かった。
この頃の樹木希林はどこにでも出てきて、これまでの空気を壊しちゃうようなイメージあり。
 
●十九歳の地図
思いのほかよかった。主役はホントに暴走族だったとか。確かに不良性が全身からにじみでてた。
蟹江敬三のだめ男っぷり、すごくよかった。そして「かさぶただらけのマリア様」役の沖山秀子!この圧倒的な存在感!絶望的にかっこいい。
 
●赤ちょうちん
秋吉久美子かわいい。ただそれだけでもいいような映画。
内容は悲劇とか青春映画とかよりコメディと言ったほうがしっくりくるけど、イラッとくる大人ばかりが出てきて辛くなった。
どうしてもうまくいかない青春の感じ、あるあるとはいかないが、ありえなくもないというか。
 
●帰らざる日々
「赤ちょうちん」同様、当時はやっていた曲シリーズかと思ってみていたが、原作があったらしい。ストーリーは、きっとこうなるだろうということが実現されていく感じがあったが、面白く観れた。
永島敏行が主役の青春映画、「八月の濡れた砂」「サード」もよかったし、なんかリアリティあって好き。
ラストの走るところ、自転車の根岸とし江、しみじみ良い場面。
 
●ヒポクラテスたち
古尾谷雅人好きだったこと思い出した。かっこよかった。背がすごく高くてぬぼーっとしてる人に惹かれる。
全員の特徴とかキャラとか、理解する前に終わってしまった感あり、最後の「彼らのその後」的な演出に入り込めなかったのは残念。
半年間のドラマとかでじっくり観たら感動しただろうと思う。
カメオ出演的な人が色々出る感じ、以前は交友関係の自慢みたいでいけ好かないと思っていたが、ここ最近映画や音楽を時代を意識して観たり聴いたりするようになったせいか、わりと好きになってる。その時代ならではの空気感が伝わってくるし、面白く観れた。手塚治虫まで出てるし!すごい。
 
●いのちぼうにふろう
面白かった!ありえないくらいの荒くれ者の住処。ファンタジックで良い。
個々のキャラクターがいい味出していた。やっぱり昭和の俳優が好きだ!仲代達矢、佐藤慶、山谷初男、岸田森!
が、勝新太郎は強そうな雰囲気が出過ぎていて「きっと最後にみんなを助けてくれるに違いないオーラ」出してて、映画のストーリーの邪魔をしていた気がする。この役は岸田森がすべきだったのでは、と思った。
山本周五郎の原作、「どですかでん」もそうだし、面白いなあ。今度ブックオフで何か買って読んでみよう、といつも思っていて忘れる。
 
●大曾根家の朝
木下恵介監督の作品、そんなにたくさん観たわけではないが、どうしても真面目すぎる感じがして入り込めないような。
しかしこの時代の空気感はよく出ていたのだろうと思った。
わざとらしいくらいの「悪い軍人」の描き方には首をかしげたくなったし、左翼的な家族は素晴らしい存在として描かれすぎだと思ったが、あとでこれはGHQの検閲がかなり介入していたというのを読んで納得。
これがキネマ旬報1位だったというのもすごいこと。国民全体が突然、反戦に翻ったようなこの感じに、美しさよりも怖さを感じる。
 
●田園に死す
若い頃に観たのだがほとんど忘れていた。なぜか女の人に襲われるシーンだけ覚えていたが、たぶんそこだけ変に冗長だったからだと思う。
詩(短歌)を映画にするのは難しいと感じる。イメージの映像化の難しさというか。川上から雛壇が流れくるところなんか、笑ってしまった。
でもこういう世界の原型を作ったのは完全に寺山修司で、それは本当にすごいことだとあらためて思った。
三上寛の髪がふさふさだった。
 
●軍旗はためく下に
再現される映像が全て丹波哲郎によって演じられ、真実がどこにあるのかわからない作りになっているのが面白い。
黒澤の「羅生門」で既に試されている手法ながらも、きちんと描けば色々なバリエーションで楽しめるものだと思った。
豚の飼育しているおじさん、「どですかでん」の乞食のお父さんだった役者、すごくいいな。「どですかでん」また観たくなった。
ただ、筋書きはラストに向かってつまらなくなったような気がした。
 
●衝動殺人 息子よ
これは…やはり木下恵介の作品あまり馴染めないかも、とまで思ってしまう。
デコちゃんと若山富三郎観たさに観たものの、だめだった!デコちゃんブランク後の映画ということで、演技も、泣きのところとか過剰で…うーん。
真実を描いているにしても、何かもっと引き込まれるように描けないものだったのかな。

●オオカミの家
導入部の実写から入って、とある宗教団体の宣伝という態で「コミューンから脱走した女の子が見た世界を表現して昔作った映像作品」をこれから観てもらいましょう、という凝った設定が面白い。この宗教団体は怪しくありませんよ!という怪しい導入部。
全体的に不穏な雰囲気だが人形や絵のデザインは愛らしく、好きだった。
しかし、虐待された子供はまた自分の子を虐待する、というような内容は哀しすぎる。これは、戦争の悲惨さを伝える、というようなものとは性質が違う。物語の中ではせめて、この子はもっと自由になって欲しかった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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