そふぃー

エッセイのような、小説のような虚実ないまぜのひとりごとをかきます。

そふぃー

エッセイのような、小説のような虚実ないまぜのひとりごとをかきます。

最近の記事

#10 演じる時の話

演劇を始めた。半年前のことだ。 私の演技はまだまだ稚拙で、私は初心者の域を出ない。けれどその魅力は私を離さない。 舞台の上だけで演者の私は生きて、次の瞬間に死んでいく。人間臭いエンタメで、根拠のない嘘で、その瞬間だけが真実だ。 演者はうつくしい生き物だ。 感情を曝け出す。私はあなたにぶつける。 美しい私、醜い私、堂々と臆病で、まどろっこしくて単純な心。 舞台上のこの私を愛してくれ、嫌ってくれ。 存分にその色眼鏡で心ゆくまで解釈して、歪めて、まっすぐに輪郭を捉えて。

    • 安全をピルとエビリファイで買って、安心を人のぬくもりに求めてる

      • #9 見送り

        風には未だ冷たさが残り、開けた空はどこか寒々しい。 他方空気には花の甘い香りが混じり、景色を彩るのは薄桃色の花々。 ホールから出てきた卒業生を迎えるのは祝言で、視界の端にあなたを見つけ、私は手を振る。 振り返された手のひらと晴れやかな笑顔で、私は胸が詰まる思いになる。 共に過ごした時間は私の中にたしかなかたちで残っていて、決して優しいばかりじゃない思い出も、きらきらと輝き出して刻まれる。 これからあなたのいない未来を歩むのだと、突きつけられる。 あなたの未来が明るいこと

        • #8 摩擦

          ざらざらしている。 布団の擦れる音がざらざらしている。 風に揺らされた街路樹がざらざらしている。 治りかけのこころの傷がざらざらしている。 小さい頃、小さな大理石を紙やすりで磨いて勾玉を作ったことがある。 優しく丁寧に繰り返し擦れば、表面に艶が出て、絹のように滑らかになっていった。 そうして出来上がったものの、まんまるな縁を触るのが好きだった。 頬を撫でると、肌の表面もざらざらしている。 このざらざら、は、あのやすりのように、何かを磨くためのものなのだろうか。 とろける

        #10 演じる時の話

          遠く、時を重ねて、その先に何があるというのだろう

          遠く、時を重ねて、その先に何があるというのだろう

          #7 創作にまつわる私の記憶

          思えば、創作活動は常に自分のそばにあった。 母はアマチュアだが歌う人で、幼かった頃母のライブには毎度連れて行かれた。 そして、私はそのライブの出演者や観客に可愛がってもらっていた。愛想が良くまあまあ礼儀正しく、幼い素直さを残した私は、「母の自慢の子」として上手に振る舞う術を知っていた。何故か母のお客さんが私のファンになったりもしていた。私は可愛かったのだ。 母が所属するバンドも観客もコロコロ変わったため、その度に私は異なる大人に出会うことになる。 プライドの高い母が好んで

          #7 創作にまつわる私の記憶

          #6 架空日記②

          手のひらが濡れている。だらんと垂れ下がった腕の先から、血液とは違う温度、冷たい水がぽたぽたと床に落ちる。 私は不思議に思う。これはなんだろう。赤貧の労働者の如く、私はじっと手を見つめる。 洗面台で手を洗ったのだから、濡れているに決まっている。冷えた水にさらされて、冷え性の指先は平熱を奪われたのだ。 寒い。床が濡れている。すぐにタオルで拭き取らなくては。頭で分かっていながら、なおも私はそうしない。顔の前に手を持っていくと、つうと腕を経由して、肘から雫が落ちていく。私はその温度

          #6 架空日記②

          #5 僕とメンマ

          メンマをご存知だろうか。ラーメンのお供として優秀な、ベージュで繊維質でしっとりとしたアレである。2000年台のかの有名なラノベで「みーつけた!」された小さな少女のことではない。甘口でシャキシャキしている、ラーメン界隈では助演男優賞を受賞しても忖度ないような(メンマをジェンダー化する意図は微塵もないが)憎いヤツである。 では、あやつが何でできているか。その答えをとある親戚に聞いた時、僕は衝撃を受けた。 「人が食べた後の割り箸を漬けたものだよ」 幼かった僕は仰天した。数多のちびっ

          #5 僕とメンマ

          #4 夢の家

          柔らかな日差しが、高く聳える葉の隙間から漏れ出て、地面に模様を描いている。 細い足が軽やかに、獣道を行く。黒く長い尾が柔らかな藪の中にちらちらと揺らめくのを、少年の瞳は捕えた。思わず足を止めた。 竹藪が広い舗装された道路の片側に広がっている。その奥では初夏の風がそよぎ、辺りは溢れんばかりの涼やかな音色で包まれている。先は深い緑に包まれて見えない。 耳をすませば辛うじて聞こえる、ちりんという澄んだ音に誘われて、少年は竹林の奥へと歩みを進めた。 木陰に入れば、微かに汗ばんだ肌が

          #3 架空日記①

          夢の世界が薄れていき、視界がいつもの天井を写した。 昨日のコップに残った水で錠剤を口に含む。馴染みのある柔軟剤に染められた空気 デジタル時計は午後1時を示している ロマンチックのかけらもないねとガウンを引きずり洗面台へ 浮腫んだ瞼、鳥の巣のような頭を振って冷たい水で拭う 今日は何を着ていこうなんて考えもつかない 機械的に生の食パンを口に放り込んで、窓からの白い日差しにようやく気付いた 子供の叫びは嬌声に似てる タブーを犯したくだらない思考 認知の歪みがうなりを上げる 物

          #3 架空日記①

          #2 雨の日の話

          雨の日が好きだ、と今日だけ思うことにした。灯火を消してくれるから。指先に挟んだ煙草からたなびく煙を眺める。アスファルトの香、土煙のようなざらっとした苦い香りの奥にほのかな焦げたバニラを感じ、ビニール傘の裏から街灯に照らされぼんやりと艶めく雫の音に耳を澄ませる。恋の終わりの音、重い匂いだ。 良い思い出で終わらせたいから、いつもは嫌な雨の日も気に入ってるように振る舞った。こんな日もたまには悪くないねって笑おうとした頬は重力に逆らえないまま、ただきゅっと口を結んでいる。ストレート

          #2 雨の日の話

          #1 自己紹介

          こんばんは、そふぃーです。 ひとりごとを誰かに見て欲しくて、noteを開設しました。 好きなものは猫と煙、嫌いなものは自分は他人の気持ちを完全に理解できると思い込んでいる人とカタバミです。 よろしくお願いします。

          #1 自己紹介