2020/04/18

『辞めません。家からも出ません』

という趣旨のメッセージが届いているのをケータイで確認する。よかった。できるだけ援護射撃すると返事をした。長い返事になり、これには2時間かかった。フグにやれることは限られている。限られているうちで、やれることをやるのも、またフグ流だ。

起きた。雨が降っている。

特に何をやる予定もなかった。数日前にダウンロードした代数の教科書をざっと眺める。「数学は分からないときは全く分からないけど、分かると当たり前に思える」最初に読み進めるときは1文字1文字をピクロスのブロックのようにコツコツと叩いて理解していくしかない。一度、理解した数学は、2回めには10倍くらいの速度で了解できる。3回め、4回めにはもっと早くなる。この代数の教科書はそれほど読み込んだわけではないけど。

ルール1「固有名詞を書かない」
の、例外1「ピクロスは一般名詞のように扱う

僕にとって「ピクロス的なもの」とは心を無にして黙々と行える知的作業一般のことを指す。ピクロス的なものに当てはまる日常の活動は、あまりにも多い。

僕がなんとなく行っているピクロス的なものへの対処が、結果として誰かにありがたく思われることもある。しばしば、それに1つの利用価値を見出して、僕に適切なピクロス的なものを割り当てて解決させ、見返りを払ってくれたりする人も現れる。

僕はそういう人たちを尊敬する。彼らの能力が、僕の知覚から価値を掘り出している。僕自身は僕の知覚は、自分の一部であって、そこに価値の尺度は持ち込めない。

昼前になり、おもむろにリビングを覗くと、シェアハウスの住人がぞろぞろと起きてめいめい朝食兼昼食を採っていた。冷凍されたナポリタンを5分かけて解凍する。コッフィーを3杯分わかす。ナポリタンを食べる。コッフィーのうちの1杯をとって、再び自室にこもる。

雨はやまない。日課の英単語アプリ2000単語を終える。

昨日の帰宅時より畳に転がしたままのリュック、その中から別のノートパソコンを取り出す。先日の会議に参加していた留学生から預かったものだ。これはその子が、親から譲り受けたPCだ。「リモートワークの可能性を模索するので、ノートやタブレットがあれば持ってきてほしい」と、会議の前日に頼んだのは僕だった。

会議終了後、その場で対応したものの、まず言語設定が母国のものになっており、キーボード配列も含めて諸々がおかしい(EnterとBackSpaceが効かない)。普段遣いのものではない旨を確認し、許可をとって僕の家に持ち帰らせてもらった。

昨日、途中までやった設定手順を再開する。スタートボタンを押して現れる。「面版」という文字はパネルっぽいから、「控制面版」がコントロールパネルだろう、あとはアイコンからネットワークを探し、無線LANに接続する。OSのアップデートを行う。「下裁」はダウンロード。これは知ってる。その後で言語パックを落とさないといけないな。これもピクロス的なものである。

アップデートと再起動を繰り返すうちに、寝てしまっていた。再び起きるとお腹が空いており、日も暮れている。出陣のときだ。

名前も知らない謎の草野菜をたくさん、クルミを1パック、キムチを2種、アマニ油、えごま油、ヨーグルトが8個つながってるやつ、ノンアルコールビール、ノンアルコールビール、少し高めの鮭とば。あと、頼まれものの、りんごジュースと味噌汁パック。味噌汁パックは初めて買ったので店員さんに場所を聞いた。

家に戻ると、味噌汁パックが既にもう1セット買ってあった。こういうことは、ある。冷蔵庫の自分の棚にリュックの中身を詰める。リビングに住人が1人、本を読んでいたので、ノンアルコールビールと鮭とばで釣った。あの系列の電気屋には(十分な売場面積がある場合)プラモデルが売っている、などの話をした。

自室でただの水を飲む。少し部屋を片付けようと、ペットボトルの外装をむいていた。

メッセージがケータイに届く。昨日詰められていた、もうひとりからだ。いくつか忍者を頼まれた。もちろん協力すると返事をした。腹を決めた麒麟児が2人、人畜無害のフグが1匹、つまり挟み撃ちの形になるな。

(2020/04/19 へ)

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