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仮想通貨革命(著:野口悠紀雄)

さかのぼること7年超、2014年6月発刊の著作ながら、全く色褪せない知見、示唆に富んだ指摘を目の当たりにしたので共有します。
副題は「ビットコインははじまりにすぎない」

以下、内容抜粋です。

仮想通貨はこれまでの体制とは様々な点で折り合わない。
多くの国はこれを国家に対する反逆であるとみなし、排斥しようとする。
時代は常に新しい技術を過小評価する。
かつてグラハムベルによる「電話」が「おもちゃ」と揶揄され、
ノーベル経済学賞受賞者でさえかつてのIT革命に懐疑的であったように。

しかし、

仮想通貨はコンピューター技術の進歩によってもたらされたものであり、従来の通貨より優れている。そのため仮想通貨は間違いなく普及していく。「良貨は迅速に悪貨を駆逐する」のだ。

「革命」とは「その運動が人間の力では押しとどめることができないものであること」である。


ビットコインの要諦は「プルーフ・オブ・ワーク」

大変な労力をかけなければならない作業(膨大な計算)を課すことでセキュリティが保たれる。改竄という悪事が合理的でなくなるよう設計されたシステム。一見「奇妙奇天烈」だが、ビットコインの取引が改竄できないようにするきわめて巧妙な方法である。
著者はこれは紙幣の透かしで偽札を防ぐ、また「竹取物語」でかぐや姫が5人の公達に仏の御石の鉢など入手が困難なものを求めたことに例えている。

DACについて

DAC=Decentralized Autonomous Corporation(分権化した自動企業)
組織の運営をビットコインの手法を用いて自動化するもの。
中央集権的なトップの管理者がいなくても機能する組織。
きわめて野心的。
さらにホワイトカラーの二極化も進む。
つまり
・DACを作ったりそれに指令する人
・DACに使われる人
DACの普及により格差が広がる懸念はあるが、社会全体が発展すれば富の再分配は拡大する。
DACでは経営者をも代替する。
当時IT業界を牽引していたグーグルとアップルも決して安泰ではないと指摘している。

社会への影響

現在の金融市場は負担なしで財政を拡大できる不自然な状態。
仮に日銀が市中の金融機関より当座預金の払い戻しの要求を受けたら日銀券を増発せねばならない。
マネーストックの上昇は潜在的なインフレをもたらす。
インフレが想定される状況では、ビットコインが資産逃避手段として用いられる。
米国における金融緩和が終了して金利が上昇すると
日米金利上昇差が拡大、円安に移行する。
ビットコインは経済政策や金融政策の本質を原点に立ち返って見つめ直すべきことを迫っている。

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7年前から上記知見をもって将来を予見していたことを考えると、著者の思索の深さと先見の明に畏敬の念を抱かざるを得ません。
特にDACがもたらす社会の変容や、財政膨張による破綻のシナリオへの警鐘、、。(なお昨今DACというよりDAO「Decentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)」が一般的)

スタグフレーションが現実化する今、日本経済は暗闇からの出口を模索するも、悲観的なシナリオしか浮かんでこないですね。。。
既得権益に固執していては前進はあり得ません。
仮想通貨の普及とともに中央集権から分散型社会へ転換しつつあるいま、
あらためて「個」の動きが先鋭化していくことを考えると変化しないことのリスクは甚大です。
自ら新しい波を見つけ、その波に真っ先に乗ることが肝要です。

上記は本著作における要点のほんの一部を備忘録的にまとめたものです。
実際の書籍にはさらに多くの学びがつまっています。

仮想通貨に関心を持っている人のみならず、これからの時代を感じたい人にはぜひ一読することおすすめします。


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