日経・経済教室(2019年・財政検証)を読む②

公的年金財政の健康診断に相当する「2019年・財政検証」の公表を受けて、日経新聞が経済教室で全2回の特集を組んでいます。議論を深める観点から、簡単なコメントをしたいと思います。

第2回は、以下の「年金財政検証 見えた課題(下)基礎年金の劣化回避が急務 駒村康平・慶応義塾大学教授」です。

この論考(経済教室)で、注意するべきは以下の記述です。

マクロ経済スライドが導入された04年改革以降、特例水準やデフレのため同制度を適用しない期間が長引いた結果、国民年金(基礎年金)の財政が悪化し、基礎年金に対するマクロ経済スライドの適用期間が長期化することが確認された。これは全国民が受給する基礎年金の低下を意味する
図にケース3の賃金水準別代替率の変化を示した。19年を起点にすると、47年の給付水準は低所得者ほど大きく低下する。低所得者(月額賃金22万円)の年金水準は98.1%から76.4%へと22%低下し、平均的な所得層(同43.9万円)の低下幅18%を上回る。高所得者(同76.8万円)は46.1%から39.4%へと15%の低下にとどまる。マクロ経済スライドは基礎年金の給付水準を低下させ、低所得者の年金水準を大きく引き下げる「逆進性」を持つ。

この指摘を別の側面から分かり易く説明すると、次のようになります。

まず、2019年の財政検証において、2029年度以降の実質GDP成長率が0.4%となる「ケースⅢ」では、2019年度の所得代替率61.7%が2047年度以降で50.8%になるという推計結果となっています。

この推計結果は、2019年度の年金額と比較して、モデル世帯の年金額は実質的に約2割カット(=1-50.8÷61.7)となることを意味します。

ですが、重要なのは、所得代替率の中身です。2019年度の所得代替率61.7%の内訳は、基礎年金部分が36.4%、報酬比例部分が25.3%で、それらの合計が61.7%になっています。

それがケースⅢでは、2047年度以降で所得代替率が50.8%になるわけですが、その内訳は、基礎年金部分が26.2%、報酬比例部分が24.6%となっていいます。

これは、1階部分(基礎年金部分)の給付が約28%カット(=1-26.2÷36.4 )される一方、2階部分(報酬比例部分)の給付が約3%カット(1-24.6 ÷25.3)されることを意味します。基礎年金部分を28%もカットすると、低年金の問題を一層深刻化させることになり、この問題にどう対応するかが、政治の大きな課題になることが分かります。

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