「年金受給開始、75歳からでも」に対する雑感

現行制度上、年金の受給開始は原則65歳ですが、「繰り上げ」「繰り下げ」という仕組みがあり、受給開始は60歳から70歳の範囲で選択できます。

この仕組みにつき、以下の記事では、受給開始を60歳から75歳に拡大する方向で厚労省の審議会が本格的に検討を進めている旨の話が取り上げられています。

現行制度では、「繰り上げ」で受給開始を65歳から1か月早めるごとに年金額が0.5%減少する一方、「繰り下げ」で受給開始を1か月遅らせるごとに年金額が0.7%増加するルールになっています。厚労省は、このルールも見直す予定のようで、以下の記事もあります。

今は65歳から1カ月早めるごとに0.5%減り、遅らせるごとに0.7%増える。厚労省案は、早める場合の減額率を0.4%に縮め、遅らせる場合の増額率は0.7%のまま維持するとした。今の増減率を決めたのが2000年で、平均寿命が3年ほど延びた。何歳でもらい始めても生涯の年金額を一定にし、年金財政に影響が出ないようにするため見直す必要が出ていた。今回の見直し案は前倒しの受給が今より有利になると見ることもできる。17年度末で70歳の国民年金受給者のうち、65歳より遅くもらい始めた人は1.5%とごくわずか。一方、早くもらい始めた人は19.7%にのぼる。

「繰り下げ」よりも「繰り上げ」を選択する人々の方が多いという記事の指摘は確かにその通りですが、以下のコラムのとおり、マクロ経済スライドが発動されると、最悪ケースでは、将来の年金額は実質的に4割カットになる可能性もあります。ですから、「繰り上げ」は相当厳しい状況になると思われます。

むしろ「繰り下げ」で受給開始を75歳とすれば、年金額は84%も増加するわけですから、マクロ経済スライドで4割カットになっても、現状の給付水準は絶対に確保できます。

人生100年時代、それなりの年金の給付水準を確保したい場合、75歳の受給開始を含め、やはり「繰り下げ」を選択する方が賢明に思います。

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