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VES Award 2023

まもなく第95回アカデミー賞が発表になります。
今年は、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を含む10部門でノミネートされ注目されています。特にミシェル・ヨーがアジア系として88年ぶりに主演女優賞に、また「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」に出ていた子役のキー・ホイ・クァンが助演男優賞にノミネートされているなど、話題に事欠きません。

それと並行して、Visual Effect(VFX:特殊効果)についての賞も開催されています。それが「VES Award」です。

VESとは、Visual Effect Societyのことで、世界におけるVFX関係者の団体組織です。会員を集めた試写会や様々な技術勉強会を開催するなど、VFX技術の底上げを行なっています。日本にも40名余りの会員が活動していますが、試写会や勉強会の会場が欧米に限られていることもあり、なかなか恩恵に与れないのが残念ではあります(最近はネット配信も増えて改善はされています)。
そのVESが、毎年、アカデミー賞に合わせて開催されるのが「VES Award」なのです。映画だけではなく、TV番組やアニメ、ゲーム、イベントなど25部門にわたっており、各分野での優れたVFX技術が表彰されています。

今年2023年は、2/15 に発表され、日本でも話題になった「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が9部門で受賞、「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」と「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」がそれぞれ3部門を受賞しました。
欧米の作品は、金と力に任せたハイクオリティなVFXが想像されますし、多くはその通りなのですが、「アバター〜」は水中でのモーションキャプチャなど制作方法において大きな進化がありました。顔の表情も同時にキャプチャするパフォーマンスキャプチャの手法を前作から行なっており、今作ではより精度の高い方式を採用、それをカブキと呼んでいるようですね。名前の由来は定かではありませんが、キャプチャするポイントの配置が歌舞伎の隈取のように見えるからではないかと思います。
私はVES会員であり投票権もあるので、ノミネート作品を拝見しましたが、一番驚嘆したのはOUTSTANDING VISUAL EFFECTS IN A SPECIAL VENUE PROJECT部門を受賞した「ABBA Voyage」ですね。昨年ロンドンで開催されたABBAのバーチャルコンサートのためのシステムおよび映像制作が紹介されていたのですが、素晴らしいものでした。ABBAメンバーをデジタルで再現するのはもちろん、背景や見せ方、それに合わせた会場のシステムなど、どれをとってもすごいの一言でしたね。
また、昨今話題になっている新たな映像制作手法であるバーチャルプロダクション技術もさらに向上しており、今後はAIも含めて新しい制作方法が次々に生まれてくるだろうとワクワクしてきます。

残念ながら未だアジア系のVFXは受賞していませんが、アカデミー賞同様、今後はどんどん出てくるだろうと期待しています。特にアニメ作品の制作はどんどんデジタル化しているので、今話題になっている「THE FIRST SLAM DUNK」は候補になり得るんじゃないでしょうか。私が関わってきたアニメ作品も今年公開予定なので、そちらも出品できればと考えています。

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