パラノマサイトを遊んで

どうも。三日坊主王・糸蔵です。
いやー。久々にアドベンチャーゲームにやられました。

『パラノマサイト File23 本所七不思議』

去年何らかのゲーム賞を取ったことは知っていて、Steamで購入だけしていたものの、何となくだらだらとプレイを先延ばしにしてしまい……昨日やっとプレイに至りまして。
結果、ドはまり。7時間半をほとんどぶっ通しでプレイし、全てのエンディングを見届けてきました。
お陰で夜の予定に若干支障がでる勢いでしたが、本当「一旦離脱するのすら惜しい」とまで思わせてくれたアドベンチャーは久々でした。
思ったらすぐやる! と檄を飛ばしてくれた友人に大感謝でございますわ。

そして勢い収まらず、三日坊主をかましていたnoteまで開くに至った……というわけでございます。
ということで、この先ネタバレがあるぞ。
むしろネタバレしかないぞ。そしてパッションの書き散らしばかりだぞ。
未プレイ・プレイ途中の人は、是非全部見届けてから戻ってきてください。


全体の感想

良かった。
もう全てが良かった。
……これだと子供ちゃんの感想ですね、はい。

ソフトの購入自体が2024年に入ってからだったため、前評判として受賞歴のあるタイトルであること、Steam上での評価が「圧倒的に好評」であることは知っており、いつかプレイする時のために……と、それ以上の前情報はほとんど仕入れないまま実プレイに挑みました。

結果、開始2分と経たない内にやってくる、案内人の
「何とお呼びすればよろしいでしょうか」→糸蔵(プレイヤー名)と入力→「●●(Steamアカウント名)様ですね?」のコンボでハートを鷲掴みにされましたよ! 糸蔵、こういう第四の壁の越え方大好き!

後々思ったことながら、この第四の壁を越えてくる案内人の存在が、ゲームとしてもシナリオとしてもちゃんと意味があるのが嬉しかったですね。メタネタ好きでしょ? みたいなねじ込みではない、というか。
そしてメタな視点で明かされる「登場人物らしき青年の溺死」。どういうことだ? となりつつもシナリオが始まり……そこからはもう、のめり込むようにして物語に熱中していきました。

ごく普通の青年と、ちょっぴりオカルトが好きで根明そうな女性。
おお、この2人が主人公か……と思っていたら、女性の方が突然変死! おいおいおい、死ぬのは青年の方じゃなかったのかい!? いやでもなるほど、ここから他の呪主を倒して滓魂を集めていくのかな……そういや案内人からの問いに「自分を犠牲にしてでも」みたいな選択肢あったしな……と、右斜め方向へ納得。そして出会う呪主を全部私の意志で呪い殺す、やべぇ荒魂が爆誕しました。
一応……約子ちゃんは逃がすか迷ったんですけどね……でももうここに至るまでに殺してきたわけだし、事態に無関係じゃないなら呪主の可能性高かったし……出会い頭にやっちゃいました。血の気多すぎか。
結果。うちの興家が殺した人数、0人。
いや~とんだ晴曼がいたもんだな! HAHAHA!
……まあお陰で、この時点から「私=別の視点から登場人物の意識を見ている何者か」っぽいな、と分かったので全てよしです。

そして突然の死を迎える主人公。ではこの惨劇を回避するには……? と戻った先で、やはり死ぬ主人公。そして流れるテーマソング。ここからが本番、という案内人の言葉……。

ああ、いい。

脳内で「これはいいぞ……!」と熱狂の炎が燃える音がしていました。
そして第1章から、序章で見かけた登場人物たちの物語を追う事になるわけですが……これがまた良くてですねえ。
興家が序章内で出会い、言葉を交わし、一部は殺した人々の視点を追う事で「興家彰吾が死亡したために積極的な呪主が現れなかった世界線の物語」が展開されていくのに痺れました。
そして最終的には、見届けたその全てが「IF」だった、というのもね……大変良かったです。

謎解きのフェアさ

シナリオは言わずもがな、私が声高に評価したいのはこれです。
解くべき謎の答えは、全てゲーム中に用意されている。
かつ最大の謎に早い段階で気づくことも可能なように、丁寧な伏線がいくつも用意されている。
プレイヤー個人の本所七不思議、または東京都墨田区に対する知識は全く必要なく、重要な情報は全て文字情報として、謎解き中であっても確認可能な資料にファイリングされている。
そして、物語の途中で都度都度「ここまでをちゃんと理解しているか」を確認するように、管理人からの質問であったり、正答しないと進めない選択肢が発生する。

謎解きとして大変丁寧かつ親切な造りで、めーちゃくちゃ膝を打ちました。
投げっぱなしジャーマンで「ほら、難しいでしょ?」みたいな感じではなく、全ての答えがそこにある感というか。それでいて、最後の最後はしっかり自分で考えて答えを出さないといけないところとか。
これが丁寧さということか……と、ゲーム終了後に噛みしめていました。
端くれの端くれといえ、シナリオを書くひととして見習わねばならぬ。

あとは、あれですね。極端に頭の悪い登場人物・超能力ばりに全ての事情を見通している登場人物のどちらもいないことが、気持ちいい謎解きができる要因かもしれない。
登場人物と一緒に事件を追っている感がとても楽しかったです。

登場人物たち


最初は興家彰吾の視点から「殺して滓魂を集めるべき呪主」として。徐々に「共に事件の全容を追っていく仲間」として。
様々な合縁奇縁によって複雑に結びつき、本所七不思議事件と関わっていく登場人物たちが、これまた総じて魅力的に過ぎるんですよねー!
ということでこの先、延々キャラクター語りのお時間ですよ!

興家彰吾&福永葉子

ヒーローヒロインかと思いきや、初日犠牲者と黒幕だった……そんな2人。
ごくごく一般的で恋人募集中の興家青年と、ややエキセントリックながらも明るくてチャーミングな葉子さん。
本当、出会う形が違ってさえいれば、仲良く過ごすことができたんじゃないかなあ……と思えるくらいには相性良さそうな2人だったので、事件収束のためにはどう足掻いても福永葉子は死なねばならない、と気づいた時にはちょっと切なくなっちゃいました。

葉子さん、興家君の正体というか、血筋的なものにも勘づいていたのかもなあ、とか。ふたりの出会いも1か月前だもんなあ。霊夜祭を邪魔されないよう、あの場でさっさと始末するつもりだったのかな。
葉子さん本人として、興家君にちょっとでも好意というか、先祖絡みでない感情を抱いてくれていたならいいなあ、とか思ったりもします。
彼女も、霊夜祭を収束させるために死ななければならなかった、犠牲者のひとりなんですよねえ……。

興家君は……私のプレイングの上では「呪詛玉(というかご先祖)の殺意に影響されすぎた一般人」になっちゃいましたが、話の流れ的には、私が後押ししなくても自力で呪詛を行使する……ことになるんですよね、多分。だとしたらもうこの先祖にしてこの子孫ありみたいなあれですな!
私のプレイングは置いておいて。
「興家本人がやりたかったことが自身にとって最悪の一手である」ところ、好きなんですよねえ。本来彼がやるべきことは、葉子さんを生かすことではなかった。にも関わらず、葉子さんを生かすために(無意識とはいえ)先祖の意識すら利用して、霊夜祭の幕引きができないところへ、結果的には自らの死へ踏み込んでしまう……その意志の強さ、正に主人公だと思います。
彼があの場所にいる時点で、全ては晴曼にとっての成功に向かっている、というのも好きポイント。運命力の強い青年ですこと。

逆崎約子&黒鈴ミヲ

女子高生2人組!
ちゃきちゃき江戸娘の約子ちゃんと、おっとりオカルト少女のミヲちゃん。めちゃくちゃ可愛いコンビなのに、序章を除けば随一のホラー要素を担っているのがまたよいですね。学校パートは能動的な呪詛行使が難しい分、ひとによっては一番不気味で怖く感じられるんじゃないかな。

人物紹介でザ・江戸っ子みたいな紹介をされているのに案外大人しい…?→朝のぼんやりしている様子で「あ、これとり憑かれてるのでは」と直感。折々に怒りを表出させるのを見て、美智代ちゃん……おるな……と……分かってはいたんですが、あの別れのシーンはやっぱり涙腺に来ました。
実際に呪詛を行使したのは美智代ちゃん。でもそれを許したのは自分。だから他の呪主と同じように扱ってほしい。そんなこと言えないよ中々……。
約子ちゃん、本当に強い子だと思います。生き返らせたい人はいるけど呪詛を使わない、と積極的に宣言したのも彼女だけですし(津詰さんはそもそも吉見刑事の蘇りは考えてなかったでしょうから)。
芯の強い彼女だからこそ、美智代ちゃんから何も相談してもらえなかったことは悔しかったろうし、なぜ聞けなかったかと後悔したろうな……。

ミヲちゃんは物語中の安定感が半端なかった! 高校生にして秘密部署の一員で、登場人物中でも極めて高い霊能力の持ち主。学校パートで片葉の葦と対峙するシーンがめちゃくちゃ格好良かったです。一方、高級寿司の約束で素直に喜ぶのも可愛い。もうひとつの結末で、ちゃんと奢ってもらえてるといいな、高級寿司。
誰に対しても温和で、基本的に人を否定することをしない、襟尾君とは別方向の光属性の子でしたね。
だからこそ、黒幕エンドの結末は辛かった……まさか彼女が殺されるとは思っていなかったので。でも葉子さん、というか蘆乃にとっては、陰の書を広められると邪魔でしかないですもんね。
というか黒幕エンド、約子ちゃんのその後も心配すぎる。目の前で津詰さんの死を目の当たりにして、夜が明けたらミヲちゃん襟尾君の死も突きつけられるわけだから……正義感が強いだけに、あの時無理にでも残ってたら!って思いそうなのが辛いなあ……。

津詰徹生&襟尾純

劇中で呼ばれる機会がなさ過ぎて、襟尾君の名前だけ全然覚えていませんでした。すまねぇ。
この2人、興家君越しに見た時は「公園にやばいものを埋めているチンピラ2人連れ」だと思っちゃったんですよね。誤解は直後に解けましたが。
そして無軌道な若い刑事と、それを諫めるベテラン刑事かと思ったら、ベテラン側も結構無軌道だったという。いい意味で色々誤解のあったペアでした。

ポジティブお化け・襟尾君。憧れのボスと一緒に仕事できて嬉しいんだろうなあ……ボスのこと大好きなんだなあ……というのが溢れんばかりに見えていて、ひたすらに可愛い部下でした。ちょっと大丈夫か!? と思えるくらいの軽口も、ボス大好きゆえよな。
超前向きではあるけれど、年齢と経験相応にヘマはしちゃうところも、若さと青さが見えてよき。一方で高校生組に対する時はちゃんと爽やかで気の利く頼れる刑事さん、という顔が見えるのも大変良かったです。ボスといるから幼く見えるけど、立派なひとりの刑事だもんな。
だからこそ……と言うべきか。津詰さん死亡時と、根島さん取り逃がし時の慟哭の表情が突き刺さりました。前者はボスの命が失われていくのに何もできないことへの絶望、後者は自身が招いてしまった事態への焦燥……こう、光属性の人が陥る闇の表情って、ぐさぐさきますね……。

津詰さんは、初見の感想が「わーい渋ダンディ!」でした。欲望に正直。
しかしシナリオが進むにつれてどんどん可愛いおじさんだなあ……とにこにこ眺める感じに。並垣青年や根島とのやりとりを見るに、ちゃんと有能な刑事さんである事も分かって、好感度増し増しでしたね。
一方……この人が父や夫だったら、確かにちょっと嫌かもしれない。
自身の職業の特性(忙しい、家事に協力できない、死ぬかもしれない)を分かっていながら、死産した奥さんに身元不明の赤子を連れてくるのは……もちろん放っておけなかった、という気持ちは重々分かるんですが……随分酷なことをなさるなあ、と。
そして、娘が自力で真相に辿り着いてしまっていることにも気づけないまま対峙して、最後の最後まで自分の口から真相を話すことはなかった……というところに、最大のエゴと最上の愛を感じました。
最善手ではないですよね、あの答え。隠しごとにならないように答えるなら「その通り。血の繋がりはない。でも俺たちの娘に違いない」あたりであってもいいわけで。「実の娘だ」という気持ちも、それを伝えたい気持ちもきっと嘘ではなくて、それが結局今生の別れを導く言葉になるわけで……ああ辛い。
もうひとつの結末では、ちゃんと娘ちゃんに向き合ってほしいな……。

支岐間春恵&櫂利飛太

息子の死でふさぎ込んだ薄幸の美人人妻と、奇抜で有能な私立探偵。
どのコンビ・ペア・バディもそれぞれに魅力があって大好きなんですが、劇中一番お気に入りだったのはこの2人でした。雰囲気がね、抜群に良い。どこかアダルティで緊張感が漂い、同時にそれぞれの可愛らしい一面もチラチラ覗く感じは、他のペアにはない魅力でした。マダムとプロタンはいいぞ。
そしてゲーム中に一番てこずらされたのもこの2人です。駄菓子屋もう寄ったよ! 工場も調べたよ! あと何すりゃいいんじゃい! で20分近くぐるぐるしまくっていた気がします。多分ゲーム中で一番自由な調査ができるパートだから、楽しくはあったんですけどね。何を取り逃しているのかが分からなくて右往左往してました。本所のあちこちを徘徊する有閑マダムと白い探偵。目立ちすぎやで。

春恵さん……初見から未亡人感が凄かったです(実際には未亡人ではないけど)。謎めいた美女、「名前を知ったら殺しにくくなるから」という言動、呪詛発動へのカウントダウン……どれもツボに入りまくりでした。名前を知ったら殺せない、ではなく殺しにくい、なのもね。殺意がすごい。興家君が積極的に殺していた場合、櫂さんの調査に不審死の数々が引っかかっただろうから……春恵さんとしても「たった1度」に該当する相手足り得たんだろうなあ。
春恵さんの台詞で一番好きなの、あかりちゃん呪詛時の「……依頼料……清算して、くださる……?」です。自分のやったことへの言い訳は一切せず、私たちの関係はこれで終わり、と静かに切り出しているのがね……表情と相まってぞくぞくさせられ、同時に切なくなりました。
結末以外だと、春恵さんエンドが一番好きかも。何だかんだアオサギ探偵堂を修一君と訪ねているところも含めて、お気に入りエンドです。

櫂さん、初見時のエキセントリックさにまず吹き出しました。僕は櫂利飛太! じゃないんですよ。直前の忠告どこ行ったよ。これのお陰で、しばらくは彼が呪主で、姓名を知ることが発動条件なんじゃないかと危惧していました。実際は違う人の呪詛玉だし、更に厳しい条件でしたが。
春恵さんと組んだ時の有能な探偵ぶり、一方でなめどり関連ではしゃぎまくりの子供っぽさ。どちらも春恵さんにとっては強い支えになったんじゃないかなあと思っています。駄菓子屋に寄った時の春恵さんの「はいはい。」もすごく好き。
型にはまらない人だから、警察を辞めた経緯も何となく想像がつくのがいいですね。一体何枚くらい始末書書いたんでしょうね。
そして上記の春恵さんの言葉に応える「……承知した……」がとても好き。発動の瞬間にどうしてだ、とは言っても、直接的に咎める言葉は一言も発さないんですよね。最後まで大人なやりとりが……辛いんだけど好きです。
……そういやこの人だけ、死亡の瞬間が一切劇中に登場していない気がしますね。あとは全員どこかの世界線で死亡しているのに……私が見そびれてるのかなあ?


もう既に大分長くなってきたので、一旦ここまで!
後日他の登場人物のことも書けるといいな……!


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