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いま、まちと森の“いかしあい”を考えるということ ――竹中工務店×DJL×グリーンズ「キノマチウェブ」設立ストーリー

私たちDeep Japan Labは、株式会社竹中工務店NPOグリーンズとともに、2019年6月に「キノマチプロジェクト」を設立、2020年よりWebマガジン「キノマチウェブ」をスタートしました。

キノマチウェブ|https://kinomachi.jp/

「キノマチプロジェクト」とは、まちと森がいかしあう関係が成立した地域社会《キノマチ》を実現するために、まちづくり・森づくりのプレイヤーたちが、共に学び、共に行動を起こしていく活動体。

そんなキノマチプロジェクトのメディアの一つ「キノマチウェブ」は、「木のまちづくりから見つける未来のヒント」をお伝えするWebメディアですが、いざ設立、スタート!という矢先に起きた、新型コロナウイルスのパンデミック。まちで、森を感じることや木の心地を楽しむことが難しい状況になってしまいました。

そこでキノマチウェブでは、新型コロナウイルス感染症の影響もあって自宅時間が長期化しているとも言えるなか、「木」の観点から自宅時間を心地よくするノウハウやエピソードを伝える「おうち木質DIY特集」をお届けすることに!

FireShot Capture 007 - キノマチウェブ|木のまちづくりから未来を見つけるマガジン - kinomachi.jp

この特集の背景にある想いや、外で活動しにくい今だからこそ活きる「木のある暮らし」について、キノマチウェブの編集長・樫村俊也さん(株式会社竹中工務店)、同ディレクター・アサイアサミさん(ココホレジャパン株式会社)に聞きました。

“木の復権”を目指すために立ち上がった、「キノマチウェブ」

――まず、「キノマチウェブ」について簡単にご紹介いただけますか?

アサイ:
木に関わる方々や、木に関わる暮らしに興味のある方々をつなげたいという想いから生まれた、木・木材・木造・木質を題材にしたウェブマガジンです。

裏テーマは、木を通して、おどろくべきクリエイティブとイノベーションがつくられている現場を探求して、未来のヒントをインタビューや記事で読み解くこと、です。

樫村:
木というものは、昔から日本人の身近にあったものだと思います。薪や舟、家、家具、椅子など、生活の基盤にあった。人々とともにあり、いろいろな恩恵を与えていた。

例えば私が子どもの頃は、鉛筆も木でできていて先が丸くなると鉛筆削りのハンドルをぐるぐる回して、シャッシャッと、木の削り具合の感触を確かめていた。それがないと勉強もできなかった。

しかし今は、庭に植えたり、お花見をしたり、といった季節ごとの鑑賞以外にはなかなかその価値を生み出せていないのではないでしょうか。素通りしてしまっている。

今、環境問題や森林資源活用、さらには働き方改革が叫ばれているタイミングで、改めて木の価値や活用法を再考し、木の復権を目指す必要があると思っています。そのために多種多様なプレイヤーの輪を広げようと3社共同で立ち上げたメディア、それがキノマチウェブだと捉えています。

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自然と経済が両立したまちをつくるために

――どのような背景で、「キノマチウェブ」は創刊されたのでしょうか。

樫村:
戦後、木の需要は減り、流通も滞ってしまった。今に至るまでの70年以上も停滞していると、モノだけでなく、ヒトや情報も分断が起こってきます。

単純に考えても、サプライチェーン生産者(川上)、加工や製材者(川中)、最終製造・エンドユーザー(川下)の3者間で、マーケティングやコミュニケーションが成り立たなくなっている。それを新ためてキノマチウェブで呼び起こしていきたいことが背景にあります。

《キノマチ》とは、自然と経済が両立した我々が目指す地域(マチ)の姿です。そのまちをつくるには、森林資源と地域経済の好循環を示す「森林グランドサイクル」というメカニズムが持続的に働いていることが必要だと考えています。それを実践するコミュニティづくりのためのメディアが「キノマチウェブ」です。

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木の良さを“日々”味わってみませんか

――今回、特集「おうち木質DIY」がスタートしましたね。企画の内容についてと、その企画に込められた想いについても教えていただけますか?

樫村:
DIYというのは小さな活動ではありますが、川上(生産者側)と川下(最終製作・ユーザー側)がそれぞれ一歩ずつ、川中にも歩み寄った形態だと考えています。相互に川中に踏み込んで交流し、経験を積むことで相互理解を深めていくことができる。そんな視点から組まれた企画です。

アサイ:
みなさん「木は良い」といいますが(きっと日本人のDNAに備わった本能なのだと思います)、本当の意味で、木の良さを日々味わっているのかといえば、まだまだ足りないのではないでしょうか。生活様式が一変した今、みなさんに、手軽におうちを木質化することをおすすめしたいと企画しました。

ひとつ、木がそばにある良さを実際に体験してほしい。
ふたつ、決してハードルが高いことではないことを知ってほしい。
そして、我々の野望《キノマチ》の一歩は、身の回りから。

身も心も、木のそばに寄ってくれたなら

――「おうち木質DIY特集」は、どんな人に読まれ、読んだ後にはどんなことが起きてほしいですか?

樫村:
読者の方に、新たな木の価値が伝わるとうれしいです。
例えば、この記事がきっかけでDIYを実践した方が、家の内(ウチ)側で過ごしていながら、光や風の流れなどの自然や木目の感触やにおいといった開放的な外(ソト)の感覚を味わえること、また生産者の想いや提供価値を感じ取っていただくような。

それを続けることが、「木」に関するインパクトを業界で起こす起爆剤になるのではないか、と思っています。

アサイ:
読者の方が、木を「木(もく、き)」から「スギ」「ヒノキ」「マツ(パイン)」「オーク」など、樹種で呼んでくださるようになったら、一歩を踏み出せたな!と思います。ひとも、親しい存在になると「あの人」から「名前」に呼び方が変わるのと一緒です。身も心も、木のそばに寄っていただけたらうれしいです。

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構成・文=原口さとみ

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