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【マッチ プレビュー・レビュー】カタールW杯 グループD 第2節 🇫🇷フランス×デンマーク🇩🇰 【#ワールドカップアーカイブ化計画 】

1. マッチプレビュー

1.1 前提

 まずは大前提として「デンマークがフランスに勝つためには」という視点での記事であることをご留意いただければと。その理由としては、EURO2020でのデンマークの快進撃と戦う姿勢に心を惹かれたことが、大きな要素となっている。初戦でのエリクセンのアクシデントによる離脱から、失意の中でのベルギーとの奮闘。そして、変幻自在な表情を見せながらロシアに勝利して奇跡のグループリーグ突破。決勝トーナメントではウェールズとチェコを美しいカウンターで沈め、イングランドにあと一歩のところまで迫った上での、ベスト4という結果。最高の旅を見せてくれたデンマークというチームに、惚れてまうやろ〜

1.2 両チームのストロング・ウィーク

🇫🇷 フランス

■ ストロング
  ✔️ 右のデンベレ、左のエムバペのサイドアタッカーは今大会No.1の破壊力を誇っており、ポジトラだけでなく、定位置攻撃でドリブル→クロスに加え、逆サイドに流れても恐怖が続き、センターで待っているのはクロスへのシュートセンス抜群のジルー(36)
  ✔️ そんな彼らがストロングを出せる状況を作り出す、パブァールの立ち位置とラビオのスマートさと献身性
  ✔️ 最後に、今流行りの+1のバグをどの場所でも作ることができるグリーズマンが直近のアトレティコでは見ることのできない輝きを見せている(オランダのフレンキーも同じく)
■ ウィーク
  ✖️ エムバペが戻らないことによる撤退守備の歪さが初戦では露呈しており、中盤のラインが右寄りの「ラビオ(左) - チュアメニ(中央) - デンベレ(右) + グリーズマン」とめちゃくちゃで、プレシングで意図的にボールを奪うということは難しそう(デンベレが背中を気にしながら、まともに守備しているのを初めて見たが)
  ✖️ チームの中心であったベンゼマ、ポグバ、カンテ、ヴァラン、キンペンペの欠場がチームの雰囲気へ及ぼす影響が気になるところで、特に怪我で戦列を離れたリュカも欠くDFラインの統率には不安が残る。サブ組が本大会に出るのって結構不安なんよね、ヴァランとキンペンペならこれくらいやれたやろって思われるの嫌やもん。

フランスvsオーストラリア

🇩🇰 デンマーク

■ ストロング
  ✔️ ナショナルチームとしては異常なまでの配置の柔軟性が特筆すべきストロングで、EUROやNations Leagueでは「4-2-3-1」「3-5-2」「3-4-3」を併用しながら、ボール保持時のクリステンセンの列上げやエリクセンのフリーマンなど、初期配置以外にも動きを作ることが可能。ボール保持・非保持ともに、相手が嫌がる立ち位置を取れる
  ✔️ エリクセンを欠くEUROで、左サイドのメーレを中心に繰り出されたカウンターは非常に効率的で、ベスト8に入ったチームの中では最も垂直的でかつ、より多くのカウンターを見せていた(statsbombの分析記事より)
  ✔️ キープレイヤーはトッテナムに所属するホイビュアで見た目はヤンキーだが、攻守においてチームにとって助かる振る舞いをしてくれる選手。ビルドアップ時の顔出しのみならず身振り手振りでのパスルートの指示、ボール非保持時の鬼の足入れと、イケメンのデラネイを欠くデンマークの中盤に安定感をもたらせるか
■ ウィーク
  ✖️ CBのスピードには不安があり、チュニジア戦の前半途中までセパレートからの擬似カウンターで、危ないシーンをいくつか作られていた。エムバペとデンベレとの対峙となるので、このウィークは隠す戦い方が求められる
  ✖️ 押し込んだ状態での定位置攻撃は、大外から理詰めでポケットを取ったり、WBのドリブル突破からのクロスなど選択肢はあるのだが、強豪国と比較すると流石に火力に欠ける。ガラガラのフランスのセンター脇で、エリクセンやダムスゴーが受けて…

EURO2020の全試合、デンマーク×チュニジア

1.3 デンマークはこう戦え

 チュニジアとの初戦を引き分けたデンマークが、フランス戦で目指すのは「最低勝ち点1、あわよくば3」というところであろう。そのゴールを達成するためのフランスとの戦い方を想像したいのだが、デラネイの怪我による離脱だけでなく、デンマークのストロングである配置の柔軟性により、スタメンの予想が非常に難しい状況である。ただ、仮定をおかないとこのnoteは進まないので、下記の戦略と戦術を実行するための先発を選んでみた。

■ 戦略
    A. スローペースな試合(=ターンオーバーの回数が少ない)になるよう、敵陣にてフランスの守備の歪さを活用する立ち位置で、ボール保持にてより長く時計の針を進める
    B. ウィークであるCBのスピードを隠しながら、フランスのストロングのエムバペのスピードが活きるシーンを最小回数に抑える
■ 戦術
    A. エムバペの前残りによって生まれるスペースである、フランス左脇 - デンマーク右サイドに、左足でボールを持てる#11オルセンを早めに落とし前進→押し込んだ後は、ホイビュアのバランス感覚で左右に動かしながら、セントラルの管轄外であるハーフスペースを大外から理詰めで取り続ける
    B. ネガティブ・トランジション(攻→守)においては、迅速なボール奪取ではなく、相手の前進を防護する立ち方(=正面!:自陣ゴール側に垂直方向に)を優先する。はしゃがない!また、撤退時もフランス左サイドからの前進の回数を抑えるため、ウパメカノへはオルセンが強度高め、ドルベリはコナテへ右切りを基本姿勢とする。

「最低勝ち点1、あわよくば3」を取るためのデンマークの戦略・戦術
さえない的 フランス×デンマークの予想スタメン

デラネイがスタートでない試合が、Nations Leagueのオーストリア戦くらいしかなく、どういったスタメンが組まれるか全く想像できないが、チュニジア戦で途中出場した大好きな#14ダムスゴーと#7イェンセンを、スタートからエリクセンと併用するのはリスキーだと考えたため、ここはEUROの快進撃を外から支えたベテランのヴァスを入れた。アトレティコでは怪我もあり出場機会には恵まれなかったが、シメオネのチームに獲得される評価に値する守備性能と、上下動を厭わない運動量は今シーズンも衰えていないことを祈る。加えて、大外のエムバペ、エルナンデスとの1on1については、サイズもありながらスピードもPost-match Reportのデータを見ても戦えそうな、#13ニッセンが耐えてくれると踏んでいる。エムバペが入ってきたときはクリステンセンに見せたいところではあるが、「所属クラブが同じチームの選手を当てると止まりやすい説」を持っている自分としては、デンベレのカットインをクリステンセンが抑えるリターンに賭けて、初戦と同じく左に。ユナイテッドでもセンターで最低限の強度が出せることがわかったエリクセンは、守備時もホイビュアの隣で。前半はトランジションの回数を最小限に抑える戦いで、後半に走れるブライスウェイトを投入するタイミングからオープンで試合を面白く。1-1くらいになると予想!(11/26 18:00時点)いいゲームに期待!


2. マッチレビュー

Google 試合結果より

デンマーク目線では、自ら試合を動かしにいった後半に生き生きとしたエムバペにやられ、2-1負け。ただ初戦で引き分けたチュニジアがオーストラリアに敗れたため、フランスがチュニジアに負けなければ、オーストラリアに最後勝つことで自力でのGS突破を決められる状況。可能性が残って、デンマークのファンとしてはひと安心。

2.1 スタメン

フランス × デンマークのスタメン

フランス、ヴァランいけるとか聞いてないって!コーネリウスはNations Leagueのフランス戦でゴールを決めたけれど、スタメン抜擢か!そしてWGも比較的攻撃的にきたやん!という予想からのギャップがすごいスタメン。エリクセンの守備時の立ち位置に迷ったところもあったが、フランスはサイド攻撃が主体であることから問題ないと踏んで、セントラルに残したことを当てたのが救い。後付けではあるが、ダムスゴーをスタメンに起用したことによって、後半に彼の足を残せなかったこと(前半の40分以降も珍しいロストを頻発)は反省するポイントではなかろうか。まぁ結果論!

2.2 分析

🇫🇷 フランス

  ✔️ オーストラリアとの初戦同様、エムバペを戻らせないことによるリスクよりもリターンを期待する守備の立ち位置。そのなかでも、グリーズマンを相手のキーマンであるエリクセンにデートをさせたり、負担の大きいラビオのところをチュアメニと時間帯で交換してあげたり、広大に開くハーフスペースはウパメカノの目にお任せしたり、後半途中からは前線に足で強度を出せるテュラムを投入したり。個を生かすための細かい調整が上手なデシャン監督であった
  ✔️ デンマークがオープンになるまで待てるデシャンもいやらしい ※1 エムバペのプレーエリアの変化
  ✔️ この試合のMOMはグリーズマンであろう。守備ではエリクセンへのデートのみならず、DFラインまで下がって足の強さでボールを奪い、先制ゴールにつなげた。また、いつも通りのポジトラでの保持への移行・カウンターの判断のクレバーさに加え、WB-CB間をフラフラしながら裏抜けのアクションを厭わない姿勢は流石のアトレティコ。憧れます

フランス × デンマーク

🇩🇰 デンマーク

  ✔️ Abemaの解説では元日本代表監督である岡田さんが、いわゆるゴール期待値が試合全体で上がらない展開にイライラしていたが、デンマークにおいては狙い通りな前半であった。プレビューにも記載した通り、プレッシングの強度を上げず、ボール保持での時間経過を志向することにより、ターンオーバーの回数を抑制できていた(データなし)のはポジティブでかつ、エムバペのドリブルをR・クリステンセンが静的な1on1でバチっと止められていたのも問題なかった。
  ✔️ そんな前半でも、左から大外への対角のロングボール → リュカを引っ張り出して理詰めでハーフスペースを取りに行くというアタックは効果的であったように思えるが、如何せんデンマークWGが細すぎて、手押しで負けすぎた印象。久保くんさんがズーレに押し切られたように、筋肉はチョー大事。※2 デンマークのボール保持時の平均ポジションとパスライン
  ✔️ 前半のR・クリステンセンのパフォーマンスもあってだろうか、HTにブライスウェイトを投入してプレッシングの開始位置も上げ、ターンオーバーの増加による被カウンターのリスクを許容しながら、ゴールを目指していたった後半のデンマーク。個人的には同点でもOKな戦略だったので、この変更はもう少し遅らせてもよかったのではないかと考えている。 ※3 累積ゴール期待値の推移

フランス × デンマーク

2.3 データ

※1 エムバペのプレイエリアの変化

※2 デンマークの保持時の平均ポジションとパスライン

※3 累積ゴール期待値の推移(後半から↑)

Appendix. 参考リンク

EURO2020のデンマークの時間帯ごと立ち位置

statsbomb分析記事

ワールドカップ post-match report

試合ハイライト

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