詩『生活』
白湯みたいな朝陽が染み込む寝室 互いの心臓を重ねて眠る毎日、
苺柄の寝間着を纏う きみが小豆の枕を常夜燈に向かって高く投げる。
寒空が微苦い珈琲にざらめを注ぐ 香ばしく匂うメープル、
毎日の意味を忘れぬように指先を絡める儀式を済まして口づけ。
天気予報曰く本日快晴なり。
如雨露を洗う朝に ただいまが重なる。
蜜柑みたいな夕陽が溶かす煙突 互いの履歴を探り合う毎日、
惣菜を飾る値引きシール きみは緑黄色野菜の健康ジュースを籠に入れる。
湯煙の中 恥じらい泡だらけになって暖かい雨を浴びて歌うエイプリル、
閉店間近のドラッグストアを懐かしむ余裕もなさそうだけど。
冷蔵庫の奥で馬鈴薯に芽生えしソラニン。
薬罐を焦がす夜に おかえりが拡がる。
遣る瀬無い生活の幕を開く合図は騒々しい朝のクラクション、
抱き留められた心臓を引き離して退屈な愛し合いの始まり始まり。
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