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sui_sei
詩『先行配信』
新曲の先行配信を世界で最初に再生した人類になれたら
大衆の前衛に立って誇らしく死ねるような気がした。
新曲の先行配信を世界で最初に聞き終えた人間になれたら
銀河系の対蹠点にも手が届くような気がした。
ただ垢抜けたいだけなのに
直ちに蛻の殻となりたいだけなのに、
目眩く遊星の殻は単位時間ごとに破れ
数多の破片が鳩尾に突き刺さる。
新曲の先行配信を世界で最初に再生した人類になれたら
両肩を腫らした重荷が霧同然となる気がした。
新曲の先行配信を世界で最初に聞き終えた人間になれずに
極楽浄土の対蹠点でイヤホンを左耳から外した。
海馬の中で駆け巡る音波が睡魔を妨げる、
先行配信の夜は沈黙の罠だった。
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