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詩『挿絵』

異様に白く煌めく朝の冷蔵庫と 無駄に塩辛い明太子パスタ、
脇のあたりが濡れたままの苺柄の寝間着と 首の凝りを解す扇風機。
充電切れ間近の電子辞書で調べる単語 電波の悪さを推測で補填したラジオ、
庭から湧き出し壁に黒線を描く蟻の列 賞味期限切れの二本の辣油。

この景色は誰が読んでいる書籍の挿絵に過ぎない、
軽やかで柔らかな色彩に包まれて私達は毎日を指切りで誤魔化す。

誰も使わない電話帳の付箋と 駄菓子屋で買った氷菓のハズレ棒、
南風が擽る乾いた苺柄の寝間着と 黒猫のキーホルダーが搭乗した洗濯駕籠。
ディスクの棚に並ぶ恐怖映画はもう見飽きた 録画一覧に未視聴はない、
庭から湧き出し壁に黒線を描く蟻の列 賞味期限切れの二本の辣油。

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