連作①『始発』
水曜日の早朝に揺られながら走る
額に新品の吊り革の影法師。
太陽の白煌が貴方の髪に金輪を描いて
光の粒は長めの前髪にぶら下がる。
その完璧な秩序を
この両掌で崩してやりたい。
点滅する遮断器の赫い音が
潮汐のように寄せては返す。
黝く迸る貴方の襟足の下に隠された
透明で闇色の柔肌が爆ぜる。
その高潔な姿を
この唇で穢してやりたい。
猫のように滑らかな欠伸をして
眠たそうな頬に靨を浮かべる。
水曜日の早朝に揺られながら走る
私は貴方に恋をしている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?