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詩『黄色ボタン』

熱を帯びた漆黒の直方体が、
黄昏の残滓を反射する。

眼球と脳を繋ぐ神経細胞を弾いて
電気信号のような重低音を奏でよう。
涙腺から溢れ出す濁った飛礫は、
珈琲味のドロップス。

独りで頑張ったんだ貴方が居ない間も
柑橘類の匂いがする洗髪剤を洗い流している間も
眼鏡に付着した柔らかな指紋を拭っている間も
ずっとずっと独り法師で。


何故なんだろうか。


記憶の録画一覧を開いても、
削除するための黄色ボタンを持っていないリモコン。
早送りで再生する走馬灯も、
終わりそうにない夏さえも。

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